こうした思いもよらない展開によって、趣味で作成した翻訳を冊子を再版することが決まると、今度は中身が問題になってきました。本当に個人的な思い入れだけで作ったもので、時間的な制約もあったため、校正や修正をきちんとやることなくほぼ一次訳の段階で印刷してしまっていたのです。後から見直してみれば、誤字脱字はもちろん勘違いによる単純な誤訳もあったので、翻訳の手直しに取り掛かることにしました。

ところで、スペインの会社は夏の間、勤務時間が短縮されるHorario Itensivo集中勤務と呼ばれる制度を採用しているところがあって、幸いなことに私の勤務先もその一つ。7月から9月の半ばまでは毎日昼休みなしの6時間45分労働となります。つまり、朝8時に行けば3時前には仕事場を出ることができるというわけです。といっても年間労働時間は日本とあまり変わらず、1日8時間労働を週5日が基本。私が働く会社の場合は、毎週金曜日と夏を集中勤務とするために、月曜日から木曜日までは毎日8時間半働くことになっています。計算してみたことはないのですが、こうすると帳尻が合うらしいです。ということで、この自由時間を利用して、原文の読み込みと翻訳の手直しを進めました。

一方、プロジェクト全体については、バルセロナと日本で共同で進めていかなければならなかったのですが、距離も時差もあるために基本的な話し合いの手段はメールに限られてしまいます。そんなわけで、ラモンから一応のOKはもらったものの、なかなか詳細が詰められないまま、再び冬を迎えてしまいました。

このままじゃまずいと、12月に一時帰国した際にカフェ・ラバンデリアに通って、いろいろと話し合いました。やっぱり直接顔を見ながら話し合うと進みが早い!! たった数回の打ち合わせで、書店に並べられるようなちゃんとした形の本にすること、本を読みたいなと思う人に協力してもらえるようにZineジンを作成して販売するなど、この計画の骨子となる点が決まりました。

ちなみにジンとは英語のMagazineマガジンに由来する言葉で、アマチュアの人々が自らの手で作成して発行するいわゆる同人誌のようなもの。アンダーグラウンドの詩人たちが自分の作品を発表するために用いたそうです。そんな彼らの心意気を見習って、私たちの出版計画をより多くの人に知ってもらうために、この手法を取ってみることにしました。

バルセロナに戻り、ようやく具体的になってきた私たちの計画の中身をラモンに報告すると、『大分時間がかかったね』と言いながらも、ワズニャックの挿絵も含めて翻訳出版への使用を許可してくれました。こうして今年の1月、ようやくラモン・ブック・プロジェクトが本格的に動き始めたのです。

Cafe Lavanderiaカフェ・ラバンデリアは地下鉄『新宿三丁目』のすぐ近くにあるカフェで、ラジオチャンゴJP講座でもお世話になっています。メキシコ・チアパス高地のサパティスタ自治区で生産されたフェアトレード・コーヒーのサパティスタ・コーヒーや、パレスチナにあるキリストが最後に隠れ住んだというタイベ村産タイベビール(ゴールデン/ダーク)、スペインのConfederacion Nacional del Trabajo(全国労働者連合)が生産している有機ワインCNTワインなど個性豊かなメニューが揃っているので、新宿にお立ち寄りの祭には是非足を運んでみてくださいね。

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