大枠が決まると後は案外あっさりと進むもの。メールであれこれとやりとりしながら、いろいろとアイデアが出てきました。まず考えたのがこのプロジェクトの大きな柱の一つジンについて。ジンの方向性としては、ラモン本自体を読む時に役に立つ、副読本のようなものにすることに決まっていました。

というのも、スペイン語の読者に向かって書かれた原本と日本語の読者に向けて作る翻訳版では、読者の持つ背景が違うので予備知識が大分異なっています。これは翻訳につきものの問題だと思いますが、原文では名詞一つであっさりと書かれていることを、翻訳版の読者に理解してもらおうとすると、背景を含めて数行の説明が必要なこともたびたび。このことはラジオチャンゴの社会問題を扱う記事を訳しているときから感じていて、少しでもそのギャップを埋めようと、注釈をつけたり補足の説明を加えてきました。

ラモン本の場合も、キホーテやゲバラといったスペイン語圏であまりにもポピュラーな人物が物語の核になっているため、日本での一般知識の差がとても大きく、ただ訳すだけではどうしても情報が不足してしまうのです。さらに、この本を通して著者のラモンが伝えようとしているメッセージは、アルテルモンディアリスムと呼ばれる『もう一つの世界』を目指す動きと深く関わっているのですが、この動きの中心がラテンアメリカにあるため、情報発信に使われるのが主にスペイン語。そのため、この運動自体が日本ではあまりに知られていないという点も、原書が読まれる環境と大きく異なっています。

ラモンのメッセージをしっかり伝えるために、こうしたところも少しフォローしていきたかったのですが、注釈に入れるには情報量が多すぎました。それで苦肉の策として、冊子版用の翻訳には本文の途中に数行に及ぶコメントを埋め込む方式を取りました。

冊子版はあくまでも私的なものだったのでこれで良かったのですが、翻訳として出版するには、翻訳をしている私が前面に出過ぎている。ということで、原文からこのコメント部分を削る代わりに、ジンでそういった情報を補足して いったらどうかということになったのです。それを念頭に置いて中身を考えてみたものの、取り上げたいことがあまりにもたくさんある!!

ジンからも漏れてしまう情報をどうするか。そこから、ブログという案が浮かんできました。ブログなら分量の制限もないし、バルセロナから直接日本に情報発信ができるし。ラモンにブログの件を相談してみると、アイデアを気にいってくれて、特別にメッセージを書き下ろしてもらえることになりました。3月中旬から本格的に準備を開始し、そしてついに4月、このブログが誕生したというわけです。

というわけで、今後はここまでの歩みと平行して、本を読む人の役に立つ(と思う)周辺情報も順次アップしていく予定です。

ミゲル・デ・セルバンテス

ミュージカルにもなっている「ドン・キホーテ」は、日本でもよく知られている外国文学の一つだと思いますが、スペイン語圏での知名度は桁違い。なんといってもその作者セルバンテスは、スペイン語文学の父とされる人なのですから。そんなセルバンテスから名前を取ったInstituto Cervantesインスティトゥト・セルバンテスはスペイン語の普及のために活動する組織です。マドリッドに本部を持ち、世界各国でスペイン語やスペイン語圏の文化を紹介するために活動しています。ラモンも招聘されて英国などで講演を行っているそうです。

ついに日本にもその支部セルバンテス文化センター東京ができました。私自身はほぼ入れ違いだったので、利用したことはないのですが、スペイン語のクラスの他にもさまざまな文化的イベントが行われているみたいですよ。

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