前回ご紹介したイグナシオ・ラモネは、今年El Periodicoという新聞を有する出版グループGrupoZetaが主催するPremio Antonio Asensio de periodismoアントニオ・アセンシオ・ジャーナリズム賞を受賞しました。

その受賞の後で行われたインタビューの中でラモネは、現在の私たちの住む社会の何が問題なのか、一体何が上手くいっていないのかといったことを明解に語っています。アルテルムンディアリスモにも言及しているので、今回から2回に分けてご紹介することにしました。

第8回アントニオ・アセンシオ・ジャーナリズム賞受賞イグナシオ・ラモネ氏

-社会が「もうたくさんだ」と言ったときに状況は変わるー

VIII Premio Antonio Asensio de periodismo Ignacio Ramonet:

“Las cosas solo cambian si la sociedad dice basta”

Elianne Ros, EL PERIÓDICO DE CATALUÑA/エリアンヌ・ロス、エル・ペリオディコ・デ・カタルーニャ

2010年10月29日

世界で最も影響力のある左派ジャーナリストの一人イグナシオ・ラモネは、今週水曜日バルセロナにおいて、アントニオ・アセンシオ・ジャーナリズム賞を受賞する。同賞はグルポ・セタがその創立者を記念し創設したもので、今年で8回目となる。今回審査団が評価したのは、世界が共存していく方法として、自由が公正さの拠り所となるような世界を求めるラモネの闘いであった。

パリ13区のイタリア広場近く、ステファン・ピション通りにある小さいけれども光に溢れる仕事場から、イグナシオ・ラモネはル・モンド・ディプロマティクのスペイン語版を指揮する。本がぎっしり詰まった書棚に飾られている何枚かの写真は、このガリシア出身のジャーナリストの旅と探求心の証だ。そこにはキューバの指導者フィデル・カストロ、ベネズエラ大統領ウーゴ・チャベス、そしてチアパスの三人のゲリラと共に写るラモネの姿がある。67歳となった今も、彼が抱く世界に対する好奇心、そして世界をもっと良い場所に変えたいという思いには、一点の曇りもない。

-あなたは、知識人としての活動だけでなく、世界を変えるという強い思い、そして社会的活動への決意によって、アントニオ・アセンシオ・ジャーナリズム賞を受賞しました。こういう風に認められたことは、あなたにとってどんな意味を持ちますか?

-アントニオ・アセンシオ・ジャーナリズム賞の受賞は、大変な名誉なことだと思っている。それは、重要な賞であるということだけでなく、活動家としての面をカムフラージュせずに、私の活動全てを認めてもらえたからだ。

-あなたにとって、ジャーナリズムとは何ですか?

-ジャーナリストは、ある状況を反映するにとどまるべきではなく、提案を行うべき時が訪れたと思っている。知識人の一人として、解決策を求めるための手がかりを追うことができるからだ。それこそが、私がATTACや世界社会フォーラムの創設によって試みたことでもある。

-マスメディアに対して厳しい批判をされています。インターネットの時代におけるマスメディアの役割をどう考えますか?

-スーパーマン、スパイダーマン、ティンティンがジャーナリストだったのというのは偶然ではない。だが今日において、もはやジャーナリストはヒーローではない。ほとんどのジャーナリストにとって、労働環境は悪化しており、インターネットによってアイデンティティの危機にさらされている。支配的なメディアがソーシャルネットワークとなり、現在は誰もがジャーナリストだと主張する議論さえもある。

-この変化は社会にどんな効果をもたらしていますか?

-インターネットは、私が情報の不安定と呼ぶ現象を生み出している。そこは嘘の情報や噂で溢れているんだ。信頼できるメディアが再生産すると、その瞬間からそれが真実となる。サルコジ夫妻の不和に関する嘘の噂がそうであったようにね。次に、私たちは即時性の競争にどっぷり浸かっているが、即時性は常に品質を保障するものではない。新しい問題もあるものの、今までもジャーナリズムにとって黄金時代などあったことなどなく、ジャーナリズムの実践は常に困難を伴うものであったと考えている。

-私たちは情報の過剰摂取の犠牲者なのでしょうか?

-私が民主主義的検閲と呼ぶものが現在生じている。現実には私たちはみな、情報に窒息しそうになっている。あまりにもたくさんあるものだから、何が欠けているのかわからないのだ。つまり、何を与えられていないのかを考える時間が私たちにはない。かつては、情報と大衆の意見の間に権力という仕切りがあった。今日では、情報が情報を通さないという壁があるのだ。

-最近の著作『La catástrofe perfecta(完璧な大惨事)』の中で、もし過去の姿勢に捕らわれることがなければ、金融危機は私たちにとってシステムを変えるチャンスとなると言っていま す。しかしそれ(過去の姿勢に捕らわれること)がまさしく今実際に起こっていることではないでしょうか?

-金融大暴落が起 こったとき、経済アナリストの多くははこれほどの大規模の大惨事の後では、法の規制なしで市場が活動を行う資本主義が再び生まれることはないだろうと考えた。それにもかかわらず、システムを再構築しなければならないといった指導者たち自身をも大変驚かせたことに、現在も私たちは同じ種類の資本主義を前にしているのだ。

-国家は状況を打開するために何もできないでしょうか?

– もちろんできる。興味深いことにヨーロッパは、何よりもまずユーロの要塞を守るために厳格な政策に賭けた。一方で米国は、雇用創出のために公的資金を優先的に使用するなど、新ケインズ主義の政策を選択した。ヨーロッパの行動が米国よりも新自由主義的なのは逆説的に見える。

-ヨーロッパでは、経済危機に対する唯一の解決策のためには、社会的支出の削減は避けて通ることができないように見えます。

– フランスで何が起こっているのかを見る必要があるだろう。社会が反乱を起したのは今回が初めてでなく、フランスにはそうした歴史的特性があるのだ。フランス人に年金改革を止めることができたなら、何が他の国々で起こるだろうか? その成功によって、社会的抵抗運動が刺激される可能性がある。この危機は銀行の危機、産業の危機、社会の危機と多様な側面を持っている。現在でもすでに私たちはこの状態にうんざりしているが、この時期は辛く長いものになるだろう。

-スペインの状況をどうご覧になりますか?

– フランスとは状況が違う。失業率は倍ー20パーセントというのは非常に高い数字だー近くもあるが、フランスに比べて家族の絆はしっかりしているし、目に見 えない経済活動も多い。しかし社会が被った惨事は巨大で、国民の大部分は政府の方針の変換によるショック状態にある。朝令暮改で、公的支援政策がフランス-ドイツ軸の政策、実際にはドイツが枠組みを作ったものに変わったのだから。多くの人々が困惑している。私が恐れているのは、これがヨーロッパの多くの国で起こっているように、選挙の棄権や外国人排斥を助長することだ。

-実際、著作においてあなたは、新たなヒットラーやスターリンの台頭の危険を警告していますね。

-総じて大きな危機は、独裁的で反民主主義的、誰も必要としていない祖国の救世主といった人物を権力の座に着かせるものだ。危機のときには、人々はこの複雑な世界に対して単純な解決策を切望するようになる。しかし単純な解決策などはないのだ。(後編につづく)

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