そして今年に入って間もなく、またまたこの二人の因縁を思い出させるような出来事が報道されました。

バルガス・リョサ、ボルヘスの翻訳に350ドル支払う


バルガス・リョサは、ウルグアイのモンテビデオの書店において、1938年にホルヘ・ルイス・ボルヘスが翻訳し、再版されることがなかったカフカの『変身』を発見した。リョサが同書店に入店したのは初めてではなかった。しかしながら、今回は彼が宝石とみなしていた本を見つけたのだ。

オマージュとして温泉療養地プンタ・デル・エステで行われる講演に招待されていた作家は、妻パトリシア、息子アルバロと一緒にウルグアイに到着した。そして、ルイス・アルベルト・ラカージェ、フリオ・マリア・サンギネッティ、ホルヘ・バッジェといったウルグアイの元大統領たちと昼食を共にした。

その前に、ウルグアイの首都で贔屓にしている書店リナルデ&リッソに立ち寄り、45分程過ごした稀少本・初版本コーナーでカフカのボルヘス訳を見つけたのだ。

店主アルバロ・リッソによると、本を目にしたバルガス・リョサは「これが見付かるとは思ってもいなかった」と言ったという。彼は「その後決して再版されていなかったことを私に教えてくれた」と述べた。他にも3、4冊の本を選んだが、その中でもこの1938年のロサダ版が最も重要な作品だった。そして最も高価でもあった。

リッソはバルガス・リョサ、妻と息子は一時間ほど書店にいたと語った。「彼はとても上品で、とても優しい。ノーベル賞をとっても変わらない。玄人で、彼が目をつけたものは簡単には入手できないものだ。」と強調した。

四回目となる今回の来店は、ノーベル賞受賞者となってからは初めてであった。

エッセー、短編小説、詩の他に、ボルヘスはとても若いときから翻訳に身を投じていた。彼がスペイン語に訳したものは、フランツ・カフカの他に、エドガー・アラン・ポー、ジェイムス・ジョイス、ヘルマン・ヘッセ、ラドヤード・キップリング、ハーマン・メルヴィル、アンドレ・ジッド、ウイリアム・フォークナー、ウォルト・ホイットマン、ヴァージニア・ウルフ、ジャック・ロンドン、ジョージ・バーナード・ショー、ジョナサン・スウィフト、H.G.ウェルズ、G.K.チェスタートンなどがいる。

2011.01.12 Vargas Llosa pagó 350 dólares por una traducción de Borges

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この記事の中では語られていませんが、実はこのボルヘス訳『変身』こそが、ガルシア・マルケスを作家の道へと誘った本なのです!! このことは自伝『Vivir para Contarla』の中で、マルケス自身が証言しています。

「その本はフランツ・カフカの変身だった。ブエノスアイレスの出版社ロサダが出版したボルヘスの偽翻訳で、最初の一行で私の人生の新しい道が決まった…」

騎士小説が大流行したスペイン文学の黄金世紀(15~17世紀)には、作家が自分のオリジナル作品をアラブ語やラテン語で書かれた書物の翻訳だと偽ってを発表することも多く、こうして翻訳として発表されたオリジナルの小説を『偽翻訳(Falsa traducción)』と呼んだそうです。マルケスがここで『偽翻訳』と言っているのは、『変身』がカフカの手を離れて、ボルヘス自身の作品と呼べるものだったからでしょう。

マルケスとリョサ。愛憎が複雑に絡み合ったこの二人関係は、彼らの著作に勝るとも劣らないほど興味深いですよね。

『Vivir para Contarla』は『生きて、語り伝える』(旦敬介訳)として新潮社から発売されています。

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