前回の記事にもあるように、ル・モンド・ディプロマティクは、月に一回発行されるアルテルムンディアリスモを代表する出版物です。オリジナルのフランス語版のほか、世界中で様々な言語の版が発行されていて、日本語の電子版もあります。現在イグナシオ・ラモネはフランス版の主幹は退任して、スペイン語版の主幹を務めています。

企業の私物となっている大手マスメディアを厳しく批判するラモネが深く関わっているだけあって、ル・モンド・ディプロマティクは資本の独立を保つ仕組みになっています。公開されている株式の51パーセントを新聞ル・モンド誌、残りの49パーセントを友の会を通じて読者が所有することよって、掲載記事に対する広告主からの影響を制限することができるそうです。

また、ラモネはATTACの創設者で世界社会フォーラムの起案者と、アンチ・グロバリゼーション関連を調べていくと、どこにいっても彼の名前に突き当たるほど、勢力に活動する人物。現在の左派論客の中で最も影響力がある人物と言えるでしょう。

そんな彼の著作の邦訳が久々に出版されたようです。フィデル・カストロに行った100時間に及ぶインタビューを書籍化した『FIDEL CASTRO: BIOGRAFIA A DOS VOCES』が、『フィデル・カストロ みずから語る革命家人生』(訳/伊高浩昭)として岩波書店から出版されています。

日本にいるときに、NHKが「カストロ 人生と革命を語る」として放送したインタビュー映像を見ていました。10歳の頃に起きたスペイン市民戦争の詳細について、ラモネの間違いを訂正するほどの素晴らしい記憶力にも驚きましたが、なんといっても圧巻はフィデルの巧みな話術。20世紀の歴史をそのまま生きたような壮大な人生を、ユーモアたっぷりに語るフィデルを前に、普段はポーカーフェイスのラモネが時折見せる楽しそうな顔といったら!!

おまけに、大国アメリカに抵抗し続けるフィデル・カストロと巨大な新自由主義陣営を弾劾し続けるイグナシオ・ラモネというこの顔合わせ。フィデルのインタビュアーとして、ラモネほど相応しい人物はいないでしょう。この二人のセッションが楽しめるなんて本当に幸運だなと思ったものです。それが、今度は書籍で楽しめるなんて!

病床のフィデルが膨大な原稿に自ら目を通して、公認の自伝となっているそうですが、読んでみてフィデルが自ら自伝を書くより、こっちの方が良かったんじゃないかなと思いました。なにより定評あるフィデルの話術が存分に楽しめるし、自伝だと自分に都合の悪いことには触れないで、自らの人生を語ることができますが、質問者がいるインタビューではそんなこともできないし。

「それに関しては○○が詳細な記事を書いていただろう」と流そうとするフィデルに、ラモネは「私はあなたが語るバージョンが知りたいんです。」と食いつき、語りだすフィデル…。なんていうのも、「BIOGRAFIA A DOS VOCES(二つの声で語る伝記)」という原題が表しているように対話だからこそ。

それにしてもフィデルの人生は面白いですね。あのキューバ革命なんてほんの序の口で全体の4/1程度なんですから。分厚いから最初は読むのを躊躇していたんですけど、好奇心に勝てず開いてみたら、会話文なこともあって意外に読みやすい!! 本当に現代版「ドン・キホーテの冒険」といった感じで、読み物としても十分に面白いんじゃないでしょうか。ちなみに、ラモネの前書きよるとフィデルの執務室にはキホーテの像があるとか。

このインタビューの模様がこちら。

こんな至近距離でフィデルと向かい合って、対等に会話できるなんてラモネぐらいじゃないでしょうか。

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