今回のスペイン革命は、その始まりがスペインの地方統一選挙を控えた時期だったために、国際的な注目を集めたのは政治家に対する抗議としてでした。

しかし、DRYのスローガン「No somos mercancía en manos de políticos y banqueros(私たちは政治家と銀行家の手中にある商品ではない)」にあるように、彼らが問題としているのは政治家だけではありません。ここにある銀行家が象徴しているのが金融システムというわけで、次第に金融システムに対するの抗議活動が盛んになってきています。

というのも、大方の予想通り昨年末に政権交代し与党となった州政府大統領マス率いるCiU(カタルーニャ同盟)が、経済危機を口実とした社会保障費関連の予算削減法案を次々と可決しているからです。一件何の関係もなさそうに見える予算削減と金融機関ですが、最初の15Mのデモから継続されて使われているフレーズの一つに「No es la crisis, esto es una estafa. No es la crisis, esto es un atraco.(これは危機ではなくて詐欺。これは危機ではなくて強奪)」というのがあります。

つまり、彼らによると「経済危機の責任はバブルを誘発して暴利を貪った金融機関にあるのだから、そこから生じた多額の負債は金融機関が支払うべきである。にもかかわらず、国家が金融機関の負債を肩代わりし、その結果予算が不足したからと言って、医療保険、教育、年金といった基本的な社会保障費をカットして、そのしわ寄せを市民に被せる政府の方針はおかしい。だから、今行われようとしているのは、危機を口実にした詐欺で、市民からの公的資金の強奪だ。」ということなのです。

ちなみに未曾有の経済危機や災害による非常事態を利用して「社会保障費の削減」と「公的資産の私有化=民営化」を二大柱とする新自由主義経済政策を強引に推し進めていく手法は、カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインの著作「ショック・ドクトリン」に詳しく説明されています。

さらには、危機的な経済状況を理由にスペインに対して、ドイツとフランスを中心とするEUとIMFは新自由主義的政策を押し付けているが、スペインの経済が他国に比べて飛び抜けて悪いという根拠はないとする文書がDRYバルセロナのサイトに掲載されました。ある意味では「危機」さえ作られたものだと言うのです。以下にその要旨をまとめてみました。

ESTAFA DE LA DEUDA, ¿AÚN NO NOS DAMOS CUENTA?ー債務という詐欺に、私たちはまだ気がつかないのか?

この文書は「スペイン経済の深刻な状況」を示し、救援案の可能性を示唆するEUとIMFの最新の発表に対する答えとして生まれたものだ。

私たちは救援プランを拒否するだけに留まらず、さらにはスペインは公的債務のレベルにおいても赤字のレベルにおいても、イタリア、ドイツ、英国、フランス、ギリシアやポルトガルなどの他国よりも良好な状態にあることから、この救援というのが正当性に欠けていることを、以下に示していきたい。

しかしながら、スペインが失業、中小企業への貸し渋りなど数多くの深刻な問題を被っているということに対しては私たちも同意している。それゆえに、私たちが拒絶するものは、経済だけでなく市民全体にも不利益となる社会費の削減という方法を、債務に関する措置として提議することなのだ。

私たちが求めているのは、次のような深刻な問題を解決するための措置と一貫した姿勢だ。

  • 500万人にのぼる失業者
  • 社会から疎外され貧困に陥るリスクを有する1000万人もいること
  • 家庭には仕事を持つ家族が一人もいない家庭が全体の9パーセントを占めること
  • 危機が始まって以降すでに30万人以上が家を退去させられており、その数は今後も増加する見込みであること

私たちがいかなる「救済」をも拒絶するのは、それが経済に対して有効なものではない上に、社会に壊滅的な影響を及ぼすおそれがあるだけでなく、以下に示すデータを見ると正当性に欠けているからだ。(以下は要約です)

どうして私たちは、債務は投機的な詐欺だと私たちはみなして、いかなる救済案も拒絶するのか?

機械的に毎週市場に投じられる公債と債券の平均は30億ユーロに達する。国有財産の競売はそれぞれが、国が「巨大なローン」にサインすることと同じであるのにもかかわらず、マスメディアも株式市場もこれを祝って拍手喝采する。さらには、それに付随して、IBEX 35(マドリッド株式市場)に上場する企業の株価も上昇する。…金融市場が安定せずに操作されている現在の状況において、公的債務によって国家が資金調達することは、私たちすべての市民を囚人にするための凶悪な罠だと考えられる。

会計債務と実債務の間の差

(データ出典はEurostat/画像のクリックで拡大)

国家の赤字とは主に税収による収入と公的支出の差額のことで、今回の危機が起こるまでは、収支の差額が差額を債務で埋めてきた。ところが、危機以降はこの 傾向が変わり、銀行に向けられた多額の資金投入は会計上の「赤字」とはされない。しかし、これは紛れもない債務である。このように銀行への支援など一定の 支出を含まないものが「会計債務」(水色)で、EUはこの債務データ用いている。対して「実債務」(赤)は、銀行への資金投入や公的債務の増加も含む。つまり、国家収入 を越えるために、債務を発行しなければならない支出をすべて含んだものだ。

こうしたデータから私たちが確認したこと

1.スペインの公的債務は主に、サブプライムなどの金融商品と不動産によるバブル、銀行支援、失業率の急増を経て、急激に増加している

2.マクロ経済のデータを比較すると、スペインの国庫の状況の深刻さは、他のEU諸国や世界の国々となんら変わるものではない。実際、救援プランを実施した国が、前もって取り決められた期間内に救援で受け取った金額を返済することは、技術的にも数学的にも不可能である。そして最後に残された道が民営化=私有化となることは、ギリシアやポルトガルのケースを見ても明らかだ。さらに、この「救援」によっては、公的債務が増え、利率が上昇することにしかならない。

3.すべては投機的な世界レベルで活動する金融マフィアが、以下の目的のために仕組んだことだ。

  • 世界中の国々の負債を利用して短期間で利益を得る
  • 反社会的な改革(労働、年金など)を進めて、巨大な多国籍企業が公的サービスの分野に入り込みんで利益を貪る

結論

こうしたデータは、救援の目的が国や市民を救援することにあるのではなく、その最終目的が金融システムの救済にあることを示している。金融システムこそが、私たちを苦しめている危機に関する最大の責任者であり、政府や社会を不安定にさせる力を有する。…

だからこそ、私たちはここに再び私たちは政治家と銀行家の手中にある商品ではないこと、私たち市民は状況を理解しており、操作され合理性のかけらもないデータに同意などしないことを宣言する。

こうした主張に基づいて、AcampadaBCNは予算削減に反対する行動を呼びかけました。

その一つが7月20日の大規模デモ。週の真ん中水曜日の夕方、それもすでにバカンスシーズンに入っているとあって、人がどれほど集まるか心配していたのですが、予定時刻の7時半を10分程過ぎて到着すると、集合場所のカタルーニャ広場はすでにすごい人だかり。

この日は、ジェノバのG8サミットに対する抗議活動に参加していたカルロ・ジュリアーニが警察との衝突で命を落としてから、ちょうど10年目にあたるということで、彼の死を忍ぶプラカードを見かけました。

各地区から続々と集まってくる縦隊。

目抜き通りのグラシア通りは封鎖され、

通りまで人で溢れ返っています。

そして、いよいよ出発。

スペイン最大の銀行バンコ・サンタンデールに抗議した後、最初の目的地バルセロナ株式市場へ向かいます。

州警察が警護する株式市場の前で抗議活動。

通りを埋め尽くしながらデモ隊は前進。

「医療、教育、年金など長い年月をかけて勝ち取った権利をゲームに使うな」

「今日民主主義は通りにある。議会にあるのではない」

途中からは15Mと同じルートに入り、La patronal de empresarios(企業経営者の組織で、言うなれば日本の経団連のような経済界の代表する団体)の前で抗議をして、そのままラエタナ通りへ。

そして、最終目的地の州議会を目指しました。

この日のデモ参加者数は警察側が6000人、DRY側が3万人と発表しました。相変わらず幅のある数字ですが、現場にいた感じだと15Mと同じ程度、1万から1万5000はいたんではないかと思います。

というわけで、世界のマスコミが取り上げなくなっても、怒れる人々の闘いは継続しています。

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