先週はギリシャがEUが合意した救済プランを国民投票にかけると発表したことで、欧州経済危機への懸念がさらに拡大しました。国民投票でギリシャ国民がNOと言えば、ギリシャが債務が放棄する可能性があるというのがその理由ですが、ギリシャが現在抱える債務を完済できないことは以前からわかりきっていたこと。イグナシオ・ラモネは10月19日にバルセロナで行った講演において「ギリシャが債務を完済することはない」と断言し、さらには「スペインが経済危機から脱出する唯一の方法は、借金を支払わないことだ」と発言していました。

翌20日にバルセロナ郊外のサンタ・コロマ市が企画した講演の中で、ラモネは今回の経済危機のからくりとギリシャの問題に関しての解説を行いました。地元の高校生も多く参加していたため、非常に明解なわかりやすい説明である上に、このラモネの見解は15-M運動が現在の経済危機を偽りの経済危機とみなしている理由にも繋がるものなので、ここに内容をまとめておきます。

国の借金が問題となった場合に、格付け会社が気にするのはその国の経済成長力だけだ。もちろん、私たちは格付け会社とその独裁に異議を唱えており、格付け会社の廃止、もしくはヨーロッパにおける活動の禁止を行うことが必要だと考えている。これら格付け会社こそが、アメリカの住宅ローン危機の到来に気がつかず、サブプライムローンを扱っていた銀行にトリプルAをつけて、現在の経済危機を誘発したのだから。加えて、彼らには競争相手がいない。

こうした格付け会社が評価するのは国の成長力だ。国が成長すると富が生み出され、国は回収した税金で借金を支払うことができるから。そして、格付け会社の仕事は、借金をしたいと言っている国の信用度を知りたがっている投資家に、どの国にお金を貸したらいいのかを助言すること。信用度とは経済成長に応じるもので、最高ランクがトリプルAとなる。

一方で、IMFや欧州銀行は国々に何と言っているのか? 予算を削れ、公務員を削減しろ、社会サービス費を削れ…これが構造調整として知られているものだ。彼らが行っているのは、経済活動を麻痺させ、窒息させることで、これでは国は成長しないのは明らかだ。全く反対のことをやっているのだから。ヨーロッパの成長は大部分が消費に依存しており、人々が消費しなければ経済の成長はない。

スペインのように400万人以上の失業者がいる国において、何千万ユーロという削減を行えば、経済が成長するわけがない。結果として、経済成長のない財政緊縮プランによって、格付け会社はトリプルAをダブルAと国の格付けを下げることになる。

私たちは矛盾を前にしている。緊縮プランを行えば行うほどに、経済成長は低下し、格付けは下がり、それによって国はさらに借金を背負うことになる。なぜなら、さらに高い利息で借金を返済しなければならなくなるからだ。その結果として、国はわずかな利益を利息の支払いに充てなければならない。病にかかった国に対して下された診断によって、国の病気は治るだろうが、死ぬことになる。病気が治ったときには、国は死んでいるだろう。

つまり、緊縮プランは機能しない。私たちはそれが機能しないことを、ギリシャ、ポルトガル、スペイン、アイルランドで目の当たりにしている。緊縮プランを適用すればするほど、経済状況はますます深刻になる。ブラジル大統領ルラが言うように、出口は基本的な経済の処方箋を用いることにあるのではない。なぜなら、この方法はラテンアメリカで機能しなかったではないか。借金の問題を解決するためにラテンアメリカの国々は何をしたのか? アルゼンチン、エクアドルなどの国々が行ったのは、ただ借金を支払わないこと。そう、彼らは借金を支払わなかった。

スペインの借金はいくらというが、この借金は誰にしているのか? 誰がお金を貸したのか? その答えはスペインの銀行だ。ヨーロッパは法律を変えたため、現在では公的銀行は存在しない。以前は、各国には通常通貨を発行する中央銀行、公的銀行があった。しかし、現在では各国は公的銀行も持たず、通貨の発行ができない。つまり、国は通貨を発行することができず、お金を貸してくれる公的銀行もないというわけだ。もし公的銀行があれば、国家に利息ゼロパーセントでお金を貸していただろう。

それに対して、現在のヨーロッパの国々は私企業の銀行にお金を借りることを義務づけられている。全ての国々において、基本的に国が借金している相手は自国の大銀行だ。フランスが借金しているのはフランスの銀行で、ギリシャが借金しているのはギリシャの銀行。ここで何が起こっているかというと、こうしたギリシャの銀行はフランスやドイツの銀行に属している。ギリシャには大銀行がないためだ。ポルトガルの場合も同じで、スペインの銀行がポルトガルの債務の大部分を有している。なぜならポルトガルの銀行は部分的にスペインの銀行に属しているからだ。

さて、現在(緊縮プランによって)スペインの人々が犠牲を強いられているのは何のためか? 借金をスペインの銀行に支払うためだ。ちょっと待って欲しい。彼らこそがこの金融危機の責任者ではないか。彼らこそが私たちをこの危機に引きずりこんだのだ。「借金は支払わなければならない。完済しなければならない」と言うときに、誰に返さなければならないとは言わないことに気がついているだろうか。借金の80パーセントはスペインの銀行が所有している。

私は煽動しているわけではなく、事実がどうであるかということを延べているに過ぎない。中央銀行がないのだ。そして、欧州中央銀行は国家にお金を貸すことを禁止されている。現在のところいくらか可能になったものの、まだ十分ではない。

私の言うことをよく聞いて欲しい。今の時点で、ギリシャが借金を返さないだろうことはわかっている。ギリシャは借金を完済しないだろう。返せないのだから。救済が可能だった最初の時点で、ギリシャを支援しなかったのがその原因だ。ギリシャのGDPはユーロ圏全体のたった2,5パーセントを占めるに過ぎない。欧州全体ではなく、ユーロ通貨圏の2,5パーセント。たったの2,5パーセントだ。

約一年半前にギリシャの借金の問題が浮上したときに、救済していれば問題はなかった。しかし、ドイツはギリシャを懲らしめたがった。倫理の問題だ。ギリシャが自分たちの経済力以上の暮らしをしたのだという考えを認めなかった。普通のレベルの暮らしをしたことで、ギリシャ人を罰することを望んだ。

しかしながら、ギリシャに関して二つの点に注目して欲しい。まず一つ目。ギリシャにはたくさんの資本家がいる。特に海運業者。ご存知の通り、オナシスのようにヨーロッパの大きな海運業者はギリシャのものだ。ギリシャの危機が始まるとすぐに、主にスイスに向けて彼らの資本の流出が進んだが、その総額はギリシャの借金の三倍になる。つまりギリシャには借金を支払うためのお金があったのに、資本家達が持ち去ってしまったということ。

そして第二の点。ギリシャの予算の中で、最も多い予算が割かれているのは何か? その答えは国防費。トルコとの問題はあるものの、欧州には紛争はないのに、これは馬鹿げた話ではないか。彼らは、公的サービス、公務員の給料など全てを削減し、価格や税金は引き上げた。しかし防衛費には指一本触れていない。

ここで考えてみよう。ギリシャは誰から武器を購入しているのか。それはドイツとフランスからで、まさしくこの二つの国こそが、ギリシャの借金を懸念しているのに支援を行わず、自分たちの国の武器産業を潤すために国防費の削減を邪魔している。というわけで、状況は非常に複雑になっている。

経済的な解決策をとっている限り出口はない。政治的な解決策をとらなければならない。繰り返しになるが、債務放棄を決めたアルゼンチンはどうなったか? アルゼンチンはこの10年間9パーセントの成長を続けている。アルゼンチンはこの10年ので、スペインが30年間で成し遂げたのと同じ成長を成し遂げた。提案を全て飲むべきではない。

(2010.10.20.Conferencia de Ignacio Ramonet en Santa Coloma de Gramenetより抜粋)

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