これまで3回に渡って今回の欧州危機に関するイグナシオ・ラモネの見解を紹介してきました。簡単にまとめると、

現在の経済危機は銀行などの金融市場の無分別が誘発したもので(どのようにして危機は起こったのか?、国家が借金漬けになったのはその損失を穴埋めするためであった(危機にある新自由主義)。だから、銀行のために銀行からした借金を返済する必要はない欧州経済危機とギリシャ)。

というものです。この主張の根底にあるのが『不当債務』という考え方なのですが、こちらについてはattacこうとう(準備会)のブログの『不当な債務を帳消しにグローバルアクションウィークに寄せて(5)』を参照ください。

ラモネはこうした経済危機に関する一連の議論を、すでに2年以上前の2009年に出版された著書『La Catástrofe Perfecta. Crisis del Siglo y Refundación del Porvenir(完璧な大災害−世紀の危機と未来の再建)』の中で展開していました。

20世紀の80年代新自由主義政策が国際経済を支配し、まるで不老不死の万能薬であるかように扱われた。『完璧な大災害』においてイグナシオ・ラモネは、どのようにして2008年に史上最大の金融暴落が起こるに至ったのかを告発し、経済危機の他に気候変動危機、エネルギー危機、食糧危機と3つの危機が迫っていることを警告する。また、国際地政学における米国の弱体化についても予告し、より公正で民主主義的な土台の上で危機から脱出する方法を提案する。

  • バブル:株式市場に上場された株価の過剰な上昇のことで、必然的に突然の崩壊に至る(『バブルの破裂』)
  • 危機/恐慌:経済の機能や適応の通常のメカニズムが停止することで、経済活動の一分野で発生する場合もあれば、経済システム全体に影響を与えることもある。影響を受けた経済分野、もしくは経済全体は、変革することなしには、この苦境を回避することはできない。
  • クラック:株式市場価格の突然の倒壊

(Dictionnaire de l’économie, Pierre Bezbakh et Sophie Gherardi, Paris, Larousse-Le Monde, 2000)

という引用から始まるこの著作は、前半が歴史を紐解きながらの経済危機のメカニズムの解説、後半が現在の危機の分析と未来に向けての提案という2部構成。今回の危機は様々な要因がからみあった非常に複雑なもので、解決には相当の年月がかかるだろうという厳しい見通しを語る一方で、この危機を良い世界を目指すために利用しようという、ラモネらしいメッセージが込められています。その中から、現在の状況をぴたりと言い当てている個所を紹介しておきます。

2008年12月、ギリシャの若者たちが警察権力に殺害された一人の若者の死に抗議するために、『若者には銃弾、銀行には金』の叫びとともに主要な都市の通りを占拠したのは偶然だろうか? 現在の危機によっていっぱいいっぱいになっているこの国ー他のEU諸国も同様だーでは、民営化が公共部門の労働者を痛めつけ、公務員が徹底的な予算削減の犠牲者となり、大学、年金や医療システムが民営化に脅かされ、給与は凍結されている。激怒したギリシャの若者は、ある教授が「私たちの生活が悪化するのにはもううんざりだ」という言葉で批判した経済社会モデルに対して、辟易していることを表現しているのだ。この同じモデルが他のEU諸国でも機能しているのだから、他の国々においても抗議運動が起こる可能性を排除することができるだろうか?

Foreign Policy誌編集長モイセス・ナイームは「米国の国民感情は『ウォール街の泥棒たち』に対する私的な復讐と、『我々から仕事を奪う移民、我々の雇用をインドに輸出する多国籍企業、ほとんど税金を支払わない富裕層』に対する拒絶から生まれたものだ」のと説明している。

危機は長引くであろう。巨大な社会的痛みを生みだすであろうが、これを無駄にするべきではない。だからこそ、この『機会』を『利用しない』とことがあってはならない。むしろ、最終的に国際的経済システムと不平等で時代遅れの発展モデルを変革するために、この衝撃を利用しなければならないのだ。そして、より公正で、より連帯的で、より民主主義的な基礎の上に、経済システムと発展モデルを再建するのだ。

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