カタルーニャ州では5月の地方選で政権交代が行われ、PEOEスペイン社会労働党から政権を引き継いだCiU集中と統一党が、厳しい削減措置を実行してきました。その政策に対してデモや抗議活動が盛んに行われているにもかかわらず、今回の総選挙でCiUは再び得票数を伸ばし、中央政府における影響力を増大させています。(詳しくはこちらをご覧ください。)

この選挙結果についてイグナシオ・ラモネは「支配的なマスメディアが新自由主義が唯一の道だと繰り返すことによって、社会の一部の人々が削減を受け入れている。ユーロの消滅への恐怖が規律を生み出しているのだ。選挙民の一部は削減かカオスかと考えて、削減に投票した」と分析しています。(『¿Qué pasará cuando los sacrificios no acaben con la crisis?』)

前回取り上げたように民意の反映という観点から現行の選挙システムに問題があることは明白ですが、少なくともカタルーニャの人々は、民主主義的な手続きを踏んで、政権交代を選択しました。しかし、イタリアやギリシャで政権交替を起こしたのは『金融による国家クーデター』でした。

大いなる後退 イグナシオ・ラモネ

欧州共同体(EU)内部に、市場に立ち向かい危機を解決する政治的な意思がないことは明らかだ。現在までにヨーロッパの指導者たちの嘆かわしい行動によって、彼らが並外れて無能なことがわかった。しかし、ギリシャとイタリアにおいて『金融によるクーデター』がある種の民主主義に終止符を打った直後とあっては特に、この(正しい)説明だけでは十分ではない。凡庸で無能だというだけでなく、積極的に市場の共犯者として行動していることが明白なのだから。

私たちは何を『市場』と呼んでいるのか? それは投資銀行、保険会社、年金ファンド、ヘッジファンドというものの集合で、特に外国為替、株、国債、デリバティブ商品という4つの資産の売買を行う。

その力がどれほど巨大なものかを察するには、二つの数字を比較すれば足りる。実体経済(財やサービスを扱う会社)が毎年全世界で生み出す富(GDP)は45兆ユーロ。一方でこの間に、金融の領域において市場は世界全体で3450兆ユーロの価値の資本を動かしているのだ。つまり、実体経済が生み出すものの75倍…。

その結果はこうだ。どんな国家経済も、仮に力を持っていたとしても(イタリアは第8の経済大国)、市場が連帯して攻撃することを決めた際には、その襲撃に持ちこたえることはできない。彼らはこれを一年以上も前から軽蔑的にPIIGSと評価したポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインといったヨーロッパの国々に対して行っている。

さらに悪いことには、一般に考えられているのとは反対に、これらの『市場』は、私たちの地域経済を攻撃するためにどこか遠くの国からやって来る外国勢力だけを指すのではない。そうではなく、多くの場合攻撃者は(2008年にEU諸国が私たちのお金で救済した)ヨーロッパにある私たちの銀行なのだ。言い換えれば、ユーロ圏の一部の国々を大量攻撃しているのは、米国や中国、日本、アラブのファンドだけではないということだ。

本質的には、内側からやってくる内部からの攻撃である。ヨーロッパ自身の銀行に導かれたヨーロッパの保険会社、ヨーロッパの投資ファンド、ヨーロッパの年金ファンドなどヨーロッパの人々の預金を運用するヨーロッパの金融機関。彼らがヨーロッパの過度な負債の大部分を所有している。そして、彼らこそが、理論上は顧客の利益を護るために投機を行い、国家が支払う負債の利率を上昇させて、いくつかの国家(アイルランド、ポルトガル、ギリシャ)を破産の際に追いやった。その結果が、強欲で冷淡な『市場』をなだめるためにヨーロッパの政府が決めた緊縮措置や乱暴な予算調整に耐えている市民の苦しみだ。だが、市場とは彼ら自身の銀行のことなのだ…。

さらには、こうした機関は欧州中央銀行から利率1.25パーセントで容易にお金を調達して、それをスペインやイタリアのような国に6.5パーセントの利率で貸付ける…。それから、三大格付会社(フィッチ・レーティングス、ムーディーズ、スタンダード&プアーズ)の横柄で恥知らずな勢力。彼らが国家につける格付は、市場から信用貸しを受けるために国が支払うであろう利率に左右される。格付が下がると利率は上昇する。

こうした格付会社は頻繁に間違いを犯し、とりわけサブプライムに関する彼らの意見が現在の危機の原因を作っただけではなく、今日のような状況下においては忌まわしく悪辣な役割を表している。ユーロ圏の内部において緊縮、削減、予算調整といったプランはすべて成長率の低下と解釈され、格付会社はそれに基づき国の格付を降格する。その結果国はさらなるお金、予算をさらに削って都合したお金を借金の返済にあてなければならないことになる。これによって、経済活動が縮小し、成長率の見込みが低下するのは避けられない。こうして、再び格付会社が格付を…。

『戦いの経済』という地獄のようなサイクルが、ギリシャ政府が削減措置を増やし、厳格な緊縮策を課すにつれて、ギリシャの状況がこれほど激しく悪化した理由を説明している。市民の犠牲は何の役にも立たなかった。ギリシャの国債は紙屑同然のレベルにまで低下した。

こうして、市場は望んでいたものを手に入れた。自分たちの代表を選挙にゆだねることなく直接権力の座に就けること。ギリシャ首相ルカス・パパデモスもイタリア大統領マリオ・モンティも銀行家である。その方法は異なるものの、2人とも米国の銀行ゴールドマン・サックスで働いていた。自分の部下を権力の座に就けることを専門としている銀行だ。そして両者ともに日米欧三極委員会のメンバーでもある。(こちらの記事『ベルルスコーニの後継者』も参照ください)

このテクノクラートたちは、社会的コストがいくらかかろうとも、ある種の「限定的民主主義」の枠組みの中で、市場が要求する措置(さらなる民営化、さらなる削減、さらなる犠牲)を課していくこと義務がある。政治的指導者であれば、人気を失うのを恐れてなかなか思い切って実行できないであろう措置だ。

EUは、資本主義の残忍性が社会保護によって穏健化された世界で最後の地域だ。いわゆる福祉国家と呼ばれる。市場はそれを大目にみることなく、解体することを望んでいる。それが、権力を取る新たな方法金融によるクーデターによって政府の実権に到達するテクノクラートの戦略的使命なのだ。その上、まるで民主主義と両立するものであるかのように見せている…。

この『ポスト政治時代』のテクノクラートたちに危機を解決できるとはまず考えられない(もし解決方法が技術的なものであったならば、すでに解決できていただろう)。自分たちの犠牲が無駄で景気後退が長引くということに、ヨーロッパの市民が気付いたら、何が起こるだろうか? 抗議はどのレベルの暴力にまで達するだろうか? 経済、人々の心、そして通りにおいて、どのように秩序を維持するのだろうか? 経済界、マスメディア、軍隊の間に三重同盟を打ち立てるのだろうか? ヨーロッパの民主主義が『独裁民主主義』へと変わるのだろうか?

La gran regresión

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