2007年秋にスペイン国王フアン・カルロスがベネズエラ大統領ウーゴ・チャベスを一喝したことが話題になりました。自分を失脚させるためのクーデターに関与したとして、スペイン元首相のマリア・アスナールをファシストと非難するチャベス。当時の首相サパテロが「私はアスナールと近い考えを持つことはない。ただ、選挙によってスペイン国民が選んだ人物に敬意を払って欲しい」と言うにもかかわらず、「ならば彼にベネズエラ国民の尊厳に敬意を払うように言ってくれ」とアスナール批判を続けるチャベスに対して国王が発した一言が「¿Porque no te callas? (なぜ黙らないんだ?)」。

あの場所にどうしてスペイン国王がいるのか不思議に思った方も多いのではないでしょうか。騒動の舞台となったイベロアメリカ首脳会議は、スペイン語圏・ポルトガル語圏の集まりということで、旧宗主国スペイン・ポルトガルが参加しています。また、米州機構(OAS)は米国が音頭を取ったものです。というように今までラテンアメリカ諸国が一同に介する場には、後見人がいるのが常でした。

あれから4年が経ち、ラテンアメリカを巡る状況は大きく変化しています。その紛れもない証拠が今月12月2、3日ベネズエラのカラカスでのCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)の発足でした。自らのリーダーシップによる真の地域共同体の発足は、チェ・ゲバラが夢見ていた1つのラテンアメリカへの大きな一歩であり、ラテンアメリカの新しい時代の幕開けを意味する重要な出来事です。新自由主義との闘いで何歩も先を行くラテンアメリカは、新自由主義が唯一の道ではないことを身を持って証明してくれています。

CELAC がキューバに対する経済封鎖を行う米国を非難

カラカスのCELAC首脳会談でのベネズエラのウーゴ・チャベスとチリのセバスティアン・ピニェラ

新組織は(米国の経済封鎖が)アメリカにおける「平和と共生に悪影響を及ぼしている」とする

「21世紀はラテンアメリカの世紀になるだろう」。希望と挑戦が一杯詰まったこのフレーズで、チリ大統領セバスティアン・ピニェラは、CELACの発足会議を閉会した。後見人なしの独立したアメリカの構築の始まりを告げる2日間だった。

生まれたばかりの共同体の成長を推し量るために、「一歩一歩」進むべきだという持論を展開するブラジルと、南米の巨人ブラジルとメキシコの二極化を妨げるために、自らの重さを主張し、CELACでのブラジルとメキシコのリーダーシップを牽制するアルゼンチン。協力関係を持つというのが多数派の意見ではあるが、ALBA(米州ボリバル同盟)参加諸国が老いた米州機構(OAS)に対する包囲網をさらに引き締めた。「もう孤独の百年はないだろう」とベネズエラのウーゴ・チャベスは断言し、ブラジルのジルマ・ルセフは「あるの統合の百年だ」と締めくくる。

1962年から行われている米国のキューバに対する商業・金融の封鎖に対する「断固たる拒否」から始まり、フォークランド諸島に対するアルゼンチンの主権の擁護で終わるカラカス宣言とこの新フォーラムの主義には、大陸のアイデンティティが集まっている。

首脳会議の終わりに、CELACは「米国の経済封鎖が、キューバ国民の豊かな生活に正当化できない甚大な損害を与えており、アメリカ国民の間の平和と共生に悪影響を及ぼしている」とみなすことを記した特別文書への署名が行われた。また、これは「政治的理由から米国が用いている一連の一方的な強制的措置」の一部をなすもので、キューバの人々が「自らの政治システム、経済システム、社会システムを自らの意思で決定する権利を行使する」のを妨げる目的で行われていると非難した。

CELAC首脳会談の7つのポイント

  1. 金融危機-指導者たちは、ラテンアメリカも無事ではいられないだろうと懸念している。「社会的な包括を伴う発展のサイクルを護るためには、各国がそれぞれの国が互いに必要としていることを意識する必要がある。」とルセフはまとめ、CELACは予防的措置を模索し、地域の新しい金融システムの構築を目指すことになる。
  2. 反国家クーデター条項-2009年のホンジュラスのようなことが二度と起こらないように、一国の合憲的秩序が崩壊したり、その危機にある際にはいつでもCELACは全力で対応することを決めた。
  3. メキシコを巡る状況-米国の主要な同盟者であるメキシコ大統領フェリペ・カルデロン。彼はカラカスに大きく賭けてきた。2010年にチャベスが下した決定により国有化されることになっていた世界最大のトウモロコシ粉メーカーGRUMAの子会社MONACAは、新会社を二つ創設する契約をベネズエラ政府と結ぶことによりに国有化を回避した。一方で、巨大セメントメーカーCEMEXは国有化され、6億ユーロを受け取ることになる。
  4. FARC(コロンビア革命軍)-コロンビア大統領フアン・マヌエル・サントスは「あなたたちに求めることは単純明解だ。私たちに対する最良の支援はなにもしないこと」と言って、いかなるものであってもCELACの国内の問題への介入は拒絶することを明確にした。
  5. チャベスの癌-トリニダーデ・トバゴの首相から聖水を贈られたチャベスは「頭のてっぺんから指先まで検査をしたが、悪性のがん細胞は見つからなかった」と明らかにした。絶え間ない議論の的となっていた彼の様態は、ずいぶん回復したように見えた。しかし、アルゼンチンのマスメディアによると、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネルは彼の健康を心配しながら立ち去ったという。
  6. ホセ・ムヒカ-今回の会議で最も雄弁だったのがこのウルグアイ大統領だったが、ベネズエラ軍の上着に身を包んでいた彼のことを、自国の対抗勢力は許さず、無礼な振る舞いだとまで言っていた…。
  7. Calle 13-ラテンアメリカ左派の象徴となったプエルトリコのグループ。彼らの『El baile de los pobres(貧者のダンス)』でCELACは閉幕。

(2011.12.04 La Celac condena a EEUU por su bloqueo contra Cubaを参照)

会議の終了後に行われたCalle 13とベネズエラ交響楽団の共演による無料コンサートの映像。CELAC誕生のお祝いとはいえ、サミットの枠内でこういうライブを行うとはちょっと驚きです。

「大金はないけど、小銭ならあるぜ…」で始まるCalle 13の『El baile de los pobres(貧者のダンス)』。社会階級の存在を強烈に批判するこの曲のPVは、メキシコ人俳優ディエゴ・ルナが監督したものです。こちらは編集版ですが、オリジナル版は男性の全身がしっかり映ったもので、「映画でも広告でも女性のヌードは氾濫しているのに、男性ヌードはタブーとされているのはおかしい」という問題提起を行うためだったそう。

広告