欧州経済危機』のカテゴリーを新設して、過去の関連記事もまとめました。

年が明けてもユーロの暴落は止まりません。今月号のル・モンド・ディプロマティック・スペイン語版で、ベルナール・カセンが「2011年12月8日から9日にかけてブリュッセルで開催された欧州委員会は『ユーロ、さらにはEUの存続をかけた最後のチャンス』と宣伝された。前回までと同じようにその理事会も、大統領、首相、大臣、顧問など何百人という人員を動員した。それは桁外れなメディア的、政治的ドラマという注目の的だった。舞台上のこの一大ショーは誰に向けられていたのか? ヨーロッパの市民? そんなはずはない…」と皮肉たっぷりに指摘しているように、最後のチャンスのはずであった首脳会議が恙無く終了した後も、ユーロ通貨は信用を回復するどころか、下落の一途を辿っています。それもそのはず、ブリュッセルにおいて、欧州債務危機の根本的な解決につながるような合意は、何一つなされなかったのですから。

だからといって、危機を抜け出すための有効な解決策は未だ見つかっていないのかというと、そうではないのです。随分前から一部の経済学者は債務危機の根本的な解決には欧州中央銀行の行動が鍵となると主張しています。その中の一人がバルセロナ大学の経済学者Vicenç Navarroビセンス・ナバロ。反新自由主義の立場に立つ経済学者の一人で、アルカディ・オリべレスと同様に早い段階から15-M運動への支持を表明していました。

ナバロは反フランコ活動によって亡命を余儀なくされ、35年を過ごした米国をはじめ、スイス、英国の大学で教鞭を取ってきました。さらには、国連や世界保健機関(WHO)、スペインの社会党政権、サルバドール・アジェンデ時代のチリ、医療改革中のキューバなどの顧問を務め、ヒラリー・クリントンが率いたホワイトハウス医療改革チームにも名を連ねていた人物。

公式サイトに発表された記事から、現在のユーロシステムが抱える問題を指摘した部分を抜粋して訳出しました。

大手マスメディアがひた隠しにしてきた事実だが、基本的にユーロ通貨の価値は、インフレのコントロールを何よりも優先する欧州中央銀行(ECB)の行動に左右される。事実上インフレの抑制が彼らの唯一の目標で、今までそれを達成してこれたのは、通常の中央銀行が行う役割つまり、経済を刺激するという役割を切り捨ててきたためだ。つまり、ユーロ通貨を救うためにECBが、自らの行動によってユーロ圏の国々の経済を破壊し、それらの国々に大不況を運命づけているのだ。この大不況はまもなく大恐慌になるだろう。

ECBは、ユーロ圏において貨幣の発行ができる唯一の銀行であるにもかかわらず、発行額を少なく抑えることで、低いインフレ率を維持している。さらに物事を複雑にしているのが、銀行の利息を高金利に保つことで、融資を受けることを困難にしていることだ。その結果として経済活動は縮小し、経済成長は鈍化、不況が顔を現す。言い換えれば、ECBはユーロを救うために、ユーロ圏の経済を破壊していると言えるのだ。

『ユーロを救わなければならない』というフレーズの裏には、極めて具体的な特定の利害がある。銀行、とりわけ欧州の銀行の利益を護り続けること。だからこそインフレ抑制が彼らの唯一の目的となる。このことによって、低いインフレ、大量の失業者、後退する経済という現在の私たちの状況が説明ができるだろう。すべて、ユーロというよりは、銀行を救うためなのだ。銀行にとって、現在の不況は非常に都合がいい。ベルギーの労働組合の顧問を務める経済学者ロナルド・ヤンセンによると、ユーロ圏での銀行の利益はと2010年の500億ユーロ、今年の前半だけで270億ユーロという天文学的な数字に到達したという。

こうしたことは全て、ユーロ圏の多くの国における貧困の激増、大多数の人々の購買力の顕著な低下という犠牲の下に行われているのだ。スペインでもこれと全く同じことが起きている。最新の世論調査によると、スペイン人の70パーセントがユーロはスペインにとってマイナスとなったというのも理に適っている(こちらに関しては前回の記事も参照ください)。スペインにとってユーロの継続が望ましいのかどうかについて、スペインにおいての議論を始めた方がいいのであろう。

スペイン通貨としてユーロの使用を継続する方がいいという主張もあるが、それには代償もついてくる。その中には若者の失業率45パーセントのように非常に高くつくものもあり、こういったものに関して議論を行うべきだろう。しかしながら、今までの議論の中にはこうした代償について強調する声は見られない。それは存在しないからではなくて、そうした意見を支持する著者は、大手マスメディアの中に意見を発表するスペースを持たないからだ。このように、スペインの民主主義は不完全なものなのだ。

(『EL EURO NO ESTÁ EN PELIGRO. EL BIENESTAR DE LA POBLACIÓN SÍ QUE LO ESTÁ』より)

ちょうど、この週末にスペインの大銀行Bankia総裁ロドリゴ・ラトの給与が話題になっていました。年間234万ユーロ(約2億3400万円)とIMF(国際通貨基金)専務理事時代の28万5000ユーロと比べると、なんと8倍もの収入となったことが明らかになったからです。

「(金融危機によって)合併したスペインの銀行を指揮するのは、ワシントンから世界経済を見守るよりも高く評価される」と始まる12月31日付Publico紙の記事によると、他のスペイン5大銀行の総裁の報酬額はアンヘル・ロン(Banco Popular)123万ユーロ、フランシスコ・ゴンサレス(BBVA)530万ユーロ、エミリオ・ボティン(Santander)490万ユーロ、イシドロ・ファイネ(Caixa)260万ユーロで、ロトの収入は下から2番目になるのだとか。

こうした銀行の莫大な利益を護るために、欧州危機がECBの介入で意図的に引き伸ばされているという見方もあります。というのも、金融業界出身者が政治の中枢に配置するということが、欧州内で広く行われているからです。『金融による国家クーデター』と呼ばれるもので、スペインでも行われたことは以前の記事で紹介した通りです。現在の状況を12月31日付Publico紙を参考にまとめてみると…

  1. オーストラリア―連邦首相Werner Faymann(オーストリア銀行出身)、中央銀行総裁Ewald Nowotny(BAWAG PSK銀行最高執行役員)
  2. ブルガリアー金融大臣Simenon Djankov(世界銀行の金融責任者)
  3. キプロスー金融大臣Charilaos G. Stravrakis(プライベートバンクのキプロス銀行役員)
  4. ギリシャー首相Lukas Papadimos(ギリシャ銀行総裁、欧州銀行副総裁)、中央銀行総裁George Provopoulos(Piraeus Bank及びEmporiki Bank最高執行役員、Alpha Bank役員)
  5. デンマークー経済担当大臣Margrethe Vestager(投資ファンドID-Sparinvest A/S顧問)
  6. スペインー経済大臣Luis de Guindos(リーマン・ブラザーズのスペイン・ポルトガル第一経営責任者、Banco Mare Nostrum理事)
  7. スロバキアー経済大臣Mitja Gaspari(中央銀行総裁)
  8. エストニアー首相Andrus Ansip(ヘッジファンドInvestment Fund Broker Ltd.最高執行役員)、金融大臣Jürgen Ligi(EVEA Bank重役)
  9. ハンガリーー中央銀行総裁András Simor(CAIM Investment Bank代表)
  10. イタリアー首相Mario Monti(ゴールドマン・サックス顧問)、経済副大臣Vittorio Grilli(Credit Suisse First Boston幹部)、経済開発大臣Conrado Passera(イタリアの主要銀行の一つIntesa Sanpaola最高執行役員)
  11. リトアニアー金融大臣Andris Vilks(スイスの銀行SEB Unibank取締役)、経済大臣Daniel Pavluts(スイスの銀行Swedbank)
  12. ポーランドー金融大臣Jean Vicent-Rostowski(Banco Pekao幹部)、元首相で現在中央銀行総裁Marek Belka(欧州JPモルガン幹部)
  13. ポルトガルー金融大臣Victor Gaspar(欧州中央銀行高官)、中央銀行総裁Carlos Costa(Millenium BCP、Unibancoなどの取締役)
  14. 英国ー国際開発大臣Andrew Mitchell(投資銀行Lazard役員)、貿易投資局長Stephen Green(HSBCグループ幹部)
  15. チェコ共和国ー中央銀行総裁Miroslav Singer(Expandia Finance役員)
  16. スウェーデンー金融大臣Andres Borg(ABN Amro Bank、SEB Bank)、金融市場大臣Peter Norman(投資ファンドAlfred Berg役員、Carnegie Investment Bank AB顧問)

テクノクラートの台頭により、現在の欧州において16カ国の政府が、言ってみれば政権内に金融ロビー団体を抱える状況になっているのです。債務危機によって銀行が漁夫の利を得ているとすれば…。何度首脳会議が行われても、債務問題の解決が遅々として進まない原因はここにあるのかもしれません。

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