前回の記事で取り上げたバレンシアの春以降、警察の弾圧を受けたバレンシアの学生への連帯を表明し、教育分野の予算の削減に反対する抗議活動がスペイン全土で活発になっています。そして、昨日2月29日には20都市でデモ、ロックアウト、立て篭もりなどの抗議活動が呼びかけられていました。

29F 大学ゼネスト 

私たちは彼らの詐欺のツケを払わない

バルセロナにおいて主催者側の発表で7万人、市警察側の発表2万5000人を集めたの抗議行動は早朝から始まりました。

UABバルセロナ自治大学の学生や職員が高速道路AP-7や州鉄道の駅へのアクセスを遮断し、市の中心部で大きな交通渋滞を引き起こすと、午前10時半には200人ほどの学生がラジオ局SERに押し入ります。『Fora de Jocオフサイド』番組中に生放送で自分たちの要求を含む声明文を読み上げるのが目的でした。彼らは声明を読み終わると平和的にその場を立ち去り、ラジオ局にはいかなる損害も与えなかったそう。

私の仕事場はカタルーニャ広場の割と近くにあるのですが、13時を過ぎた頃から低く旋回するヘリコプターの音が聞こえ、州警察が動き出したことがわかりました。14時過ぎに昼食のために外に出るとちょうどデモ隊に遭遇。いつものデモに比べると若い人が圧倒的に多かったけれども、和やかな雰囲気で特に州警察の姿も目につきませんでした。

Publico紙より)

昼食後15時半頃に職場にも戻るために再び外にでると様子が一変。グラシア大通りに繋がる通りが一本州警察の手で完全に閉鎖され、通りには20台近くの警察車輛が待機する異様な光景が広がっていました。後でわかったのですが、一部のデモ参加者が暴徒化し、株式市場のガラスを割ったり、コンテナを燃やして、州警察と衝突したのこと。言われてみれば、通りを横切ったときにどこからともなく、何かが燃えた後の匂いがしていました。

その後一部のデモ参加者が、MWC携帯電話世界会議開催中のスペイン広場に向かうと、広場を封鎖した州警察と再び衝突が起こって、12人の逮捕者と12人の負傷者を出す結果になってしまいました。

Publico紙より)

いつものように、マスコミは盛んにショッキングな映像を取り上げていますが、数万人の抗議活動参加者のうちで破壊行為を行った人数はほんの一握り。なおかつ、映像を見ても顔を覆って破壊行為を行う人々が、とても一般の学生には見えないことから、この事件によって抗議活動を批判するような世論は生まれていません。数百人が大学で夜を明かし、本日も抗議活動は継続中。

未曾有の経済危機によって、様々な価値観が問い直される状況になっている現在のスペイン。教育を受ける権利を主張する彼らの抗議活動もまた、教育とは何か、大学とは何かを問い直す問題提起でもあるのです。それが良く表れている、彼らのマニフェストをご紹介します。

MANIFEST DE LA PLATAFORMA UNITÀRIA EN DEFENSA DE LA UNIVERSITAT PÚBLICA (PUDUP)-公立大学を守る統一プラットフォームのマニフェスト

公教育は権利であり、社会が必要なものであり、特権ではない。今現在公立大学の政治と経済の変化を経験している職員や学生として、私たちには自分たちが抱く懸念を市民の人々に伝える社会的責任を感じている。大学の構造改革が行われて、次世代の公教育に対する権利が宙づりにされているのだから。私たちが今経験していることが、全ての公的分野、そして私たちが望む社会モデル全体に影響を与える変化であることを、私たちは十二分に自覚している。この改革が大学、小中学校と全ての公教育に影響を与えることを、私たちは十二分に自覚している。その一部を成す公立大学を護り、改革が現在の通学中の学生だけでなく、これから大学に行く人、将来大学に行きたいと思っている人にも影響を与えることを、皆に自覚してもらうことは私たちの責任なのだ。次世代が少なくとも、現在と同じ質の公的教育を受ける権利を手にできることを保証しなければならない。そのために、私たちは次のことを表明する。

  1. 大学モデルの変更は大学教育を受ける可能性を制限する。教育が雇用市場に参入するためだけでなく、批判能力を持つ市民の育成のためにも必要不可欠な条件である知識社会において、現在用いられている大学の政策は、大学教育を受けることを特権に変えようとしている。経済危機に苦しみ、教育が危機を乗り越えるために重要な要素として示され、さらには、この危機を招いた状況を変えるための道になりうるときに、大学への入学を困難なものとすることは、不適切であり、次世代に対する無責任な権利の侵害である。
  2. 公的分野の削減を要求する経済全体が、大学の公的融資を減らし、学生やその家族にとって教育費を増加させるための役割を担っている。
  3. 直接解雇を促していないとしても、削減は教師や研究者だけでなく職員の労働条件も不安定なものにしている。公的分野であってもそうでなくても、固定した無期限の契約は全ての労働者の権利であって、特権ではない。
  4. この不安定化の結果はサービスの質に直接反映されることになる。雇用の不安定化を政策、教師や職員の人員削減があっては、素晴らしい品質を望むことはできない。
  5. この削減は、大学の中のすべてのレベルだけでなく、業者やサービスを提供してきた企業においても多くの雇用喪失を伴う。
  6. 私たちは経営に透明性が欠けていることを告発する。斬新な大学改革は、公的経営モデルを企業モデルを混ぜ合わせた大学経営モデルを推し進めてきた。この混合によって、公的な性格を持たない機関の首尾一貫しない経営において透明性の欠如が生じている。
  7. 私たちはまた、公立大学と大学システム全体の民主主義的コントロールを徐々に喪失させるように導く圧力があることを告発する。この圧力は大学内コミュニティの参加を縮小するようにして、企業の代表が支配するピラミッド型のシステムを支持するものだ。
  8. 世界中から『顧客』を獲得する目的で大学を『国際化』する過程を前にして、カタルーニャ社会には自国の言語を、高等教育のあらゆる場面においても、常に使用する権利があることを私たちは思い返している。

公立大学について再考しなければならない。誰もがより良い大学を望んでいるのだ。それは以前のモデルにしがみつくのでもなく、金銭的利益という基準によって推し進められている改革を無批判に受け止めるのでもない。教育は商売ではなく、権利なのだ。公立大学を再建するために、改革を押し付けるのではなくて、市民の共同利益と公共の利益のためのサービスとしての大学の機能を持ち、社会と大学が自らの決断で行う改革を、私たちは要求する。

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