SATとメルカドナの一件ですが、政府の対応とは反対に共感し支持する人々は少なくありません。昨日のPublico紙に掲載されたEsther Vivasエステル・ビバスの記事に、今回の出来事の背景がうまくまとまっているので、ここに紹介しておきます。バルセロナ郊外出身の彼女は食糧主権の問題に取り組んできた市民活動家で、ここ数年はIzquierda Anticapitalista反資本主義左派党から選挙にも立候補しています。

メルカドナとSAT-誰は泥棒か?-エステル・ビバス

最も必要としている人たちに与えるために、スーパーから必需品の食品を入れた買い物カートをレジを通さずに持ち出すことは、犯罪となるようだ。しかし、働く権利を傷つけ、農産品に僅かな金額しか払わず、地元の農業を消滅させるといったことは法律で罰せられない。

これがアンダルシア労働組合(SAT)の行動から私たちが引き出した結論だ。彼らは今週火曜日8月7日にエシハ(セビリア)のMercadonaメルカドナとアルコス・デ・ラ・フロンテラ(カディス)のCarrefourカレフールという二つのスーパーマーケットに入り基本的食料品を集めると、支払いをせずにメルカドナから出て、それを必要としている人々に渡した。

この行動の後で、内務大臣ホルヘ・フェルナンデス・ディアスは実行犯の組合員を捜索し逮捕する命令を出し、「人々が大変なことは私たちの誰もに分かっているが、目的は手段を正当化しない」と断言した。フェルナンデス・ディアスにとっては、一定の目的によって正当化される手段があるにもかかわらず。SAT組合員には最も必要としている人々に与えるためにスーパーから食料品を持ち出すことはできないが、PP国民党政府にはできることがある。「危機から抜け出す」という仮定の目的で、雇用給付や公務員の給与を削減し、付加価値税を上げることができるのだ。一つには許されることが、もう一つには許されないことが明らかだ。

現在メルカドナは『食料品の窃盗』などからなるこの行動を実行者を告訴したが、ここで私たちには自問が必要だ。「誰が泥棒なのか?」

この数十年にわたってスーパーマーケットが普及させてきた生産、流通、消費のモデルは、農家や小規模商店、働く権利、環境に悲劇的な結果をもたらした。カレフールやメルカドナは、スペインにおいて小売業界を支配する大企業ランキングのトップに立ち、この実践を最もよく代表している企業である。2007年のデータによると、両社が食品流通市場で占める割合は約40パーセントに達するという。

スペインにおいて、わずか7つのスーパーチェーンが食品流通の75パーセントを支配している。カレフールやメルカドナに続いて、Eroski、Alcampo、El Corte Inglés、そしてEuromadi (Spar, Schlecker, Guissona…) と IFA (Condis, Coaliment, Supersol…)といった二つの卸業者だ。食品流通市場がこれほどまでに少数の手中にあることはなかった。これによって、私たちが何を食べ、消費するものにいくら支払い、どうやって生産するのかを決定する際に、こうした企業は巨大な力を有している。

同様にスーパーが農業モデルや農民の生活を決定しており、そこでは工業的で集約的で持続不可能な農業モデルをが推進されているために、家族経営や小規模農家には居場所がない。スーパーによる独占と農業生産者への圧力は、生産者が生産物によって受け取り支払いがどんどん少なくなる状況に導いた。農業組合COAGのデータによると、農業生産品の原価は消費者の手に届くまでに最大で11倍にもなっている。商品から得る最終的な利益の60パーセント以上が、スーパーに集中している。現在スペインにおいては、農業従事者は労働人口の5パーセントを僅かに超える程度だ。

スーパーの商業流通モデルは、その中で働く労働者にとってマイナスの結果も伴っている。流通センターの労働者は、集中的な労働リズム、単調な繰り返し業務、疲労やストレス、職業病などで特徴付けられる新科学的管理法による厳格な労働組織に身をおいているが、そこでは契約条件に関しては低賃金で変形労働時間が好まれているために、労働者にとっては社会生活や家庭生活との両立に深刻な困難が生じる。

メルカドナは他の巨大チェーンと同じように、従業員や消費者の福祉に心を砕く家庭的な企業のイメージを育もうとしているにもかかわらず、不当な労働条件を押し付けることで知られ、収益性を確保するために労働者に一定の圧力を与え続けることに基づいて労働力を管理するという政策を実施している。スペインにおける巨大流通業の企業に対する主要な組合闘争の一つが、2006年サン・サドゥルニ・ダノイアの流通センターでメルカドナの労働者が行ったものだ。その上、近年メルカドナは不当解雇やパワーハラスメントによって何度も敗訴している。

今回の件で、裁判官の前で釈明するべきなのは、フアン・マヌエル・サンチェス・ゴルディリョ率いるSATの組合員ではなく、メルカドナのオーナーJuan Roigジョアン・ロッチ(訳注)である。彼は、メルカドナで不当行為を実践することで、スペインを代表する莫大な富を蓄えることができた。ついでに、バレンシア政治劇場の裏で動く隠れた糸についての釈明も行うべきだろう。

SATの組合員がとった行動は違法であるかもしれないが、私たちがいる厳しい危機という状況においては、完全に正当性がある。その一方で、残念ながら労働条件を不安定化させることは合法であるが、正当性のかけらもない。そのことに気づく人々が次第に増えている。今後は正当性とこの動きに対する支援を前にして、権力が取る唯一の選択肢が弾圧と犯罪化であろう。だから、あきらめずに闘う人々との連帯しよう。

Esther Vivas- Mercadona y SAT: ¿Quiénes son los ladrones?

訳注)労働者の権利軽視と汚職で評判のあまり芳しくないメルカドナのジョアン・ロッチは『メルカドナのファン・ロイグ会長』という表記でニューズウィーク日本版の『国は破産でも意外に強いスペイン企業』という記事に登場しています。

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