9月11日のLa Diadaカタルーニャの日からちょうど一週間。「Catalunya nou Estat d’Europaカタルーニャ、欧州の新国家」のスローガンを掲げて、この日にバルセロナで行われたデモが史上最大の規模(参加者数は主催者200万人、州警察150万人、中央政府60万人)となったことで、カタルーニャの独立問題がスペイン国内で大きな波紋を呼んでいます。

バックに流れているのが『Els Segadors収穫人たち』と呼ばれるカタルーニャの歌です。また、デモ参加者が手にしている星付きのカタルーニャの州旗はEsteladas エステラダと呼ばれる独立主義者の象徴です。青いものが目立ちますが、赤と黄色の二色のものもあって、こちらは社会主義による独立の象徴。

報道を見ているとカタルーニャ州大統領Artur Masアルトゥール・マスを中心にカタルーニャ人が一丸となって独立に向かって進んでいるというような印象を受けるかもしれませんが、実際のところ独立の問題はそれほど単純ではありません。なぜなら、人々が独立を目指す動機は一つではないからです。

一般にIndipendentista独立主義者と言うと保守派と結びつけて考えたくなると思うのですが、スペインにおいてはちょっと状況が違います。左派の労働組合SATがアンダルシア主義を掲げていることからもわかるように、スペイン各地のナショナリズムは左派と深い関わりを持ってきました。カタルーニャにおいても状況は同じで、ほんの数年前まで独立支持のデモと言えばラディカルな左派組織が行うものだったのです。この流れを代表する組織がCUPことCandidatura d’Unitat Popular

彼らは左派的な主張と無関係のメインのデモには参加せず、他の左派組織と「Independència i Socialisme(独立と社会主義)」をスローガンに一時間早く別のデモをスタートさせていました。

そして、Republicano共和主義者の一部も独立を支持しています。市民戦争は王制を廃止し共和国となったスペインに不満を持っていた右派が国家クーデターを起こしたことで始まりました。結局、フランコ側の勝利によって共和政は中断され、民主化を経てスペインは君主制に戻っています。

共和主義の人々たちは、正当性を持つ共和国政府がクーデターによって倒されたことで、不当に共和制が廃止されたのだから、民主化を経てスペインは再び共和制に戻るべきだと考えています。その中にもカタルーニャの独立を主張する人々がいて、こちらを代表するのがERCことその名もEsquerra Republicana de Catalunyaカタルーニャ共和主義左派で、創始者の一人フランセスク・マシアがスペイン第二共和政の下1931年4月14日にカタルーニャ共和国設立宣言をした州大統領。マシアはイベリア半島内で独立を達成した共和国が自主的に集まってFederació Ibèrica イベリア連邦となることを夢見ていて、カタルーニャの独立をその第一歩と位置づけていました。現在はすっかり勢いを失ってしまいましたが、独立主義者の代名詞とも言える政党でした。

次に、独立によってPaïsos Catalans カタルーニャ諸国を実現しようと考えてる人たちがいます。この大カタルーニャ語圏と呼ばれる枠組みは、スペイン領のバレンシアやバレアレス諸島はもちろん、北カタルーニャと呼ばれるフランスのピレネー=オリアンタル県などから成るものですが、言語圏ということからカタルーニャ語を話す地域があるイタリア領サルダーニャ島までも含める場合もあるようです。

こちらの代表がカタルーニャの言語と文化の振興に尽力するOmuniumオムニウスという組織で、カタルーニャの日には毎年凱旋門に巨大な独立主義の州旗を掲げて、カタルーニャ語を振興するイベント「Festa de la llibertat 自由の祭典」を開催。カタルーニャ語のブックフェアやカタルーニャ語で歌うバンドを中心にした無料コンサートなどが行われます。

最後のライブシーンに出てくるのはObrint Pasオブリント・パスというバレンシアのグループ。

そして、このオムニウス・サバデイ支部のスポークスマンが代表を務めるのが、今回のデモを呼びかけたAssemblea Nacional Catalanaカタルーニャ国民会議です。2011年4月に発足した新しい組織ですが、2014年に独立の是非を問う国民投票の実現を目指して、積極的に様々な活動を行っています。今年は6月に内陸部のレイダから「Marxa cap a la independència 独立に向けての行進」という独立支持をアピールする行進を開始、今回の11Sのデモはその最終段階として位置づけられていました。

これに加えて、近年の独立主義を掲げる保守政党も誕生しています。バルサことFCバルセロナの会長を退任し、政治家に転向したJoan Laportaジョアン・ラポルタが旗揚げしたSolidaritat Catalana per la Independència独立のためのカタルーニャ連帯党もその一つです。元バルサ監督ペップ・グアルディオラがビデオを通して、独立支持の発言をしたことが話題になっていましたが、このラポルタこそがグアルディオラを監督に抜擢した人物なわけですから、驚くこともないのかもしれません。

というわけで、一口に「独立支持」といっても人々の思い描く独立の形は多種多様なので、独立までの道のりはまだまだ長そうです。その一方で、この数年で独立を巡るカタルーニャの人々の意識が大きく変化して、選択肢の一つと考える人の数が目に見えて増加したのは紛れもない事実。確実に数年前とは状況が違います。

ただ、それがそのまま独立への気運の高まりを表すのかどうかは、実際のところまだわかりません。というのも、スペインの人々の中には、独裁時代の政権政党ファランヘ党直系であるPP国民党(詳細はこちらの記事を参照ください)に対する根強い嫌悪があって、PPが政権を取ると各地で独立主義者が増えることから、PP政権は『独立主義者工場』とも呼ばれています。つまり、独立を支持することは「PPが政権を握るスペインはまっぴら」という意思表示でもあるわけです。だとすれば、政権交代によって状況が一転する可能性も捨てきれません。

いずれにしても、カタルーニャの人々が現状に飽き飽きして、変化を求めているのは確か。カタルーニャでも熱い秋が始まりました!

*2014年12月に内容を一部修正・加筆しました。

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