19世紀の終わりにスペインの人々は、17世紀に騎士道小説のパロディとして生まれたセルバンテスの『エル・キホーテ』を再発見し、1905年の出版300年記念を機にキホーテが大きなブームとなりました。その当時、あらゆる論理に抗って闘いながら、人々が風車としか見なさない巨人、不正義に立ち向かう理想主義者キホーテの中に英雄の姿を見出したのが、他でもないLibertarios リベルタリオス、何よりも自由を愛するアナキストたちでした。キホーテのように生きようとした彼らは、自由の最大の敵ファシズムに行く手を阻まれ、1939年の内戦終結後にその多くが祖国を追われることになります。

それから数年後…。1944年8月ドイツ・ナチスの手からフランスを解放した兵士を載せたハーフトラックには、グアラダハラ、マドリッド、ゲルニカ、エブロといったスペインの地名に混じって、エル・キホーテの名前が付けられていました。実は、パリに一番乗りした自由フランス第二装甲師団所属の第9中隊は、アナキストを中心とする亡命スペイン人共和主義者を集めて作った隊だったのです。彼らは独裁者フランコが勝利を宣言しても、キホーテに倣って決して勝利を諦めることなく、外国人部隊に入隊してファシズムとの闘いを継続していました。

1928年生まれのチェ・ゲバラはパリ解放のときは16歳で、彼が生まれ育ったアルゼンチンはスペインの共和主義者の亡命者を積極的に受け入れた国の一つでした。おそらく、彼はキホーテを頭のおかしな騎士が主人公の騎士道小説としてではなく、正義のために闘う理想主義者の物語として読んだことでしょう。

こうした背景を踏まえて、ラモン・チャオが書いたのがチェ・ゲバラを主人公としたキホーテのパロディ『チェのさすらい』です。書籍版の在庫がなくなったのでPDF版を作成しました。20世紀のキホーテの一人であるチェ・ゲバラの物語を、21世紀のキホーテたちに捧げます。どうぞお楽しみください。

文:ラモン・チャオ/イラスト:ワォズニャク

ラジオフランスから激動の現代史を見つめてきたラモン・チャオ。「マヌ・チャオの父」や「イグナシオ・ラモネの盟友」としても知られるガリシア人作家が、チェ・ゲバラの人生をドン・キホーテの遍歴と比較するユニークな手法で語る。

(本書の内容)
●プロローグ/イグナシオ・ラモネ
●自転車「ポデローサ(怪力)号」に乗って
●バイク「ポデローサ(怪力)2号」に乗って
●一つの冒険の終わり
番外編
●ラモン=チェ=ドン・キホーテ
●検閲
●年譜

*PDF版のダウンロードは以下のリンクからどうぞ

チェのさすらいPDF版(2.5MB)

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