主要メディアの執拗なネガティブキャンペーンにもかかわらず、ギリシャの人々はSyrizaに未来を託しました。Syrizaは何をしようとしているのか? ギリシャの人々はどうして「極左」と呼ばれるSyrizaを支持したのか? ギリシャから二つの声をお届けします。

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「Syriza」という党名ですが、ギリシャ人ジャーナリスト、マキリによると「急進(ラディカル)」と訳される部分は「革新」の意味で、さらに現在のSyrizaの政策は中道左派。党名の日本語訳「急進左派連合」は誤解を招くものだと思うので、Syrizaという表記で統一しました

その1)2015年1月16日付けスペインのエル・パイス紙に掲載されたSyriza代表ツイプラスの署名記事

欧州での変革は南から始まる―アレクシス・ツィプラス

 ギリシャとスペインの有権者には政治を転換させることが可能だ

 1月25日ギリシャは過去への扉を閉じるだろう。Syrizaの勝利は欧州の労働界と文化界にとって変革の希望である。緊縮政策と横暴の闇から民主主義、連帯、持続可能な発展の光へ。しかし、ギリシャは欧州の南からやってくる変革の始まりにすぎない。間もなく私たちはまた、どのようにスペインに到来するのかも目にすることになるだろう…。緊縮政策、不安、恐怖を政治的な後ろ盾となり、汚職とスキャンダルにまみれた者たちの敗北が私たちの国々で始まる。私たちの民は、腐敗することのない統治者に明日への扉を開くために、未来をその手にしている。彼らがこの危機の間私たちに対して拒絶してきた未来を取り戻すための新しい政治のやり方を。こうした理由から、スペインにとってギリシャの民とSyrizaの勝利は、期待できる新たな道というメッセージとなる。欧州を変革するため、南は前進を続ける。

もはや欧州は危機の犠牲者ではない。危機は、始まった場所米国において拡張的な金融・財政政策のおかげで終息した。今日欧州は、首相メルケルの連帯的とは言えない決断と欧州の保守派によって強要された緊縮政策の犠牲者なのだ。危機に対する新自由主義的な措置は、欧州の南の国々を政治的に容認不可能、かつ経済的に持続不可能な均衡状態へと導いた。私たちはGDPの停滞と低成長の間を、もはや人々の想像の限界を越える地点に達したデフレ、膨大な債務、高い失業率と貧困の間を生き延びている。

ユーロ圏にとって未だに極めて脆弱な成長率(2014年0.8% 、2015年1.1%)をもって危機から抜け出したと語ることは、緊縮政策によって最も損害を受けた人々を無視する政治的視点からしか理解できない。

こうした理由から、私たちの民の変革のための闘いはイデオロギー的熱狂に対するコモンセンス(良識)の闘いである。奴隷状態に対する尊厳の闘いである。

私たちにとって、保守勢力が無批判に受け入れてきた危機に続く不安定な状況と社会的権利のカットという新たな常態は容認できないものであり、ギリシャ、スペイン、そして欧州全体が必要とする変革を私たちが支援する動機になっている。

Syrizaの勝利は、南欧の全ての革新的勢力の間の協力関係の新たな始まりを表していると同時に、経済の停滞、大量の失業者、債務超過という状況の背後にある緊縮政策へのブレーキを意味する。

そして、経済的な安定を復興して政治を汚染する汚職の実践を払いのけること、そして私たちの国々の尊厳を取り戻すことへの一歩でもある。また、亡命している私たちの若者たち、新たな移民世代が帰国を可能にするものでもある。

この危機の新たな段階において、欧州中央銀行(ECB)が欧州の鍵を握っている。量的緩和政策は、ユーロ圏があまりにも長い間陥っている危機からの集団的で持続可能な脱出に必要な措置の一つである。もし採択されれば、多くの人々にとっては遅きに失するものであるものの、歓迎されるであろう。

しかしながら、それを効果的なものにするためには、マリオ・ドラギの言う「私たちは必要とあればなんでも行う」という精神に十分に応えるべきである。これが意味するのは、ECBのプログラムは条件も例外もない、大規模なものなければならないということだ。つまり、それを必要とする国を全て対象とするべきである。

しかし、金融政策、それ自体には欧州を停滞から引き出す力はない。私たちは緊急に成長と投資を促進する拡張的財政政策を必要としている。つまり、付加価値の高い分野における投資プログラムへの融資、そしてそれを失業率の高い国々の経済において優先的に行う再工業化プランの二つに付与する欧州版ニューディール政策だ。最後に、戦後のドイツの復興を助けた1953年ロンドン会議を例にして、債務に関する欧州会議の創設を通じ、調整された方法で債務の負担を軽減することが必要不可欠である。ユーロ圏の債務超過に対する社会的に持続可能で集団的な解決策は、首相メルケルの立場から倫理の危機に関わる措置として理解されるべきではない。倫理的な義務であるべきなのだ。

1月25日、希望は祖国を手にする。そして、欧州は変革のためのコンパスを手にする。

El cambio en Europa comienza en el Sur – Alexis Tsiprasより)

その2)今回Syrizaに票を託した元新民主主義党支持者

視聴者からの意見を電話で受けるテレビ討論番組に、現在政権を握る新民主主義党(ND)のハジダキス氏が参加した。そこにかかってきた一本の電話…(Youtubeにスペイン語字幕付きのこの映像がアップされたのは1月中旬のこと。数日後に放送された民放TVのギリシャ特集でも取り上げられるほどの話題になった)。

司会者―カツリスさん、こんばんは。

女性―こんばんは

司会者―どうぞ。お話しください。

女性―みなさん、明けましておめでとうございます。 みなさんにお願い致します。お願いですから… 一斉に話すと、私たちにはあなたたちの言うことが理解できないのです。

司会者―カツリスさん、おっしゃる通りです。私が責任者です。それは私の責任です…。

女性―ちがいます。全員の責任です。 残念なことに、そうして私たちは相手の話を遮ることを学んできました。 私は個人的にハジダキスさんに話をしたいと思います。

ハジダキスさん、もしかすると、あなたは自分が偉大なキリスト教徒だという幻想を抱いていますか? そして、ツィプラスさんはあなたほどのキリスト教徒ではないと考えていますか?

私はこのことを質問します。ハジダキスさん …。

なぜなら、もしあなたが実際にとてもキリスト教徒的であるならば、 神のメッセージと言葉をご存知でしょうから、 それを実践しなければなりません、ハジダキスさん。 十字架を切るだけでは十分ではないのです。

ハジダキスさん、あなたは食事なしで夜を過ごすことを考えたことがありますか? 何年もかけて建てた家を銀行に奪われるという脅威を感じたことがありますか。 凍ったマットレスの上で眠ったことがありますか? そうした人々のためにあなたは何をしましたか?  回答を頂きたいです。

私は何年も新民主主義党に投票してきましたが、今回はアレクシス・ツィプラスに票を投じます。 アレクシス・ツィプラスが私を楽園に連れて行ってくれるからではありません。違います。 私は彼の言葉の純正さと彼の澄んだ眼差しを信用します。 私はその滑稽で、邪悪で、たちの悪い…もう一人は信用しません。

うなだれているだけなの?! 何か言うことはないの?

司会者―カツリスさん…。

女性―私は未亡人です。私には学生の息子がいて、あなたたちは私に360ユーロの年金をくれる…。 それで暮らして欲しいと思っているの?

私に回答してください。お願いですから。 私だけではありません。 私たち、たくさんのギリシャ人は 凍りついた家で眠り、夜はなにも食べるものがないのです。

ハジダキスさん、これでよくわかりますか? おわかりになりましたか?

これは悲痛の叫びです。 もし、神の言葉が知りたいならば教えてあげます。「情け深い指導者が統治するとき民衆は幸福であり、 不道徳な者たちが権力を握るとき民衆は苦しむ」

あなたたち! どんな立場にいるのかじっくり考えなさい。

アレクシス・ツィプラスには心、純正さ、強さがあります。

ありがたいことです。そして、お喜びになってくださいな。 新民主主義党のツキもこれまでです。

司会者―ありがとうございました。カツリスさん。本当にありがとうございました。CMに行きましょう…。

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欧州の変革を目指すSyrizaは国外からも支持され、スペインのIU左派連合やPODEMOS、ポルトガルの左派ブロックといったGUE/NGL欧州欧州統一左派・北方緑の左派同盟の政党はもちろんのこと、ノーム・チョムスキー、スラヴォイ・ジジェク 、デイビッド・ハーヴェイ、ケン・ローチ、アントニ・ネグリといった数々の知識人が公に支持を呼びかけてきました(“CHANGE GREECE – CHANGE EUROPE – CHANGE4ALL!”)。

中でも、債務再編の実施という主張が支持される理由について簡単に触れておくと、「欧州金融危機」自体が金融権力を中心とする詐欺とみなされてきたことが挙げられます(「完璧な大災害」参照)。この主張は危機が始まった当初から反新自由主義陣営の論客たちが繰り返してきたものなのですが、トロイカの肩を持つ主要メディアはほとんど取り上げることがありませんでした。とりわけギリシャのケースで問題視されているのは次のような点です。

  1. 2001年ゴールドマンサックスが粉飾決済を手助けしたために、ギリシャは要件を満たして欧州統一通貨ユーロに加入できるようになった。(「いかさま銀行家」参照)
  2. EUがギリシャの危機にすぐ対処しなかったため、ギリシャの負債の3倍にあたる額の資本流出が起こり、ギリシャには返済が不可能となった一方で、スイスを始めとする「北」の銀行が潤った。
  3. ギリシャの予算の中で唯一削減されていないものが国防費で、ドイツとフランス の武器産業を潤すために用いられてきた。(「欧州経済危機とギリシャ」参照)
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