79年前の昨日1936年7月19日。フランコ将軍率いる反乱軍が2月に誕生した左派連立人民戦線政権に対して起こしたクーデターをスペインの人々が自らの手で阻止し、スペインは1939年4月1日まで続くことになる内戦に突入。ドイツのヒトラー政権とイタリアのムッソリーニ政権の支援を受けた反乱軍はファシズムを象徴する軍隊となり、ファシズムとの戦いに引きずり込まれた共和国を支援しようと、世界中からファシズム打倒を目指す人々がスペインに集結しました。こうした外国からの義勇兵による部隊がBrigades Inetrnacionales 国際旅団です。

国際旅団は、その存在については広く知られているものの、各方面から政治的に利用されてきたために、その実態とは異なるイメージが一人歩きしていました。例えば、国際旅団を扱った小説として最も有名なジョージ・オーウェル『カタロニア賛歌』は1938年に出版された初版は900部しか売れずに、冷戦下で左派によるソ連批判が評価されて1962年に再版されて各国語で広まったという経緯からわかるように米国に反ソ連キャンペーンの一部として利用された過去があります。また、スペインの保守派は「共産主義者の侵略からスペインを護った」というフランコ反乱軍側の正当性を主張するために、ソ連によるスペインへの内政干渉の証拠として国際旅団を位置づけてきました。

各陣営が自分たちに都合のいい情報のみを取り上げてきたために、なかなか掴めずにいた国際旅団の実態が、研究者たちの根気強い調査の結果、次第に明らかになってきています。その一つが国際旅団員の数。様々な政治的意図から、国際旅団の参加者数は実数より多く見積もられてきたそうで、現在は3万5000人というのが最も客観的な数字とされています。

一方で、国際旅団については、エイブラハム・リンカーン大隊のような旅団ごとの集団として、あるいは共産主義者、著名な作家といった政治イデオロギーや社会的な地位から語られるのが常でした。これに対して無名の義勇兵一人一人のバックグラウンドを追うことから国際旅団という全体像をあぶり出してみたらどうだろうかと考えたのが、バルセロナ大学教授Montserrat Sebastià i Salat モンセラット・セバスティア・イ・サラ。そして、彼女のアイデアを具体化させたものがSIDBRINT(国際旅団員の歴史的記憶)です。

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基本言語はカタルーニャ語ですが、内容の一部は英語、スペイン語、ガリシア語、バスク語、フランス語、ドイツ語、イタリア語にもなっています。英語版はこちら。昨年2月に亡くなったセバスティアの意思を継いで、バルセロナ大学の傘下にあるCRAI Biblioteca del Pavelló de la República 共和国パビリオン図書館の責任者Lourdes Prades ルルデス・プラダスが率いるプロジェクとして進行中です。

ちなみに、共和国パビリオン図書館は、第二共和政、スペイン内戦、共和主義者の亡命、フランコ体制、民主化に関する記録を収集している図書館で、建物は1937年のパリ万国博覧会でパブロ・ピカソの「ゲルニカ」が展示されたスペイン館を再現したものとなっています。

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文献記録を集めて国際旅団員一人一人のプロフィールを完成させていくという試みで、現在までに7450人の身元が確認されました。今は900ほどの文献を元に作業をしていますが、最終的に参考文献の数は1万近くなるとみられています。また旅団員リストと同時に、出身地、参加した戦闘の場所や死没地、共同墓地、強制収容所など移動の記録を追って各自の足取りを再現する地図も姿を現し始めました。

このプロジェクトに参加しているので、先日サイトの公式発表会に行ってきました。そこで聞いたスペイン内戦専門の歴史家たちの講演の中で、最も興味深かったのがドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルク教授のWalter Berneckerのもの。氏によると、ドイツ・ナチス政権が公式にフランコ反乱軍側を支援した一方で、反ファシストのドイツ人はフランコ打倒がヒトラーからの祖国解放につながると考えて国際旅団に参加。マドリッドでは公式ナチス軍とドイツ義勇兵というドイツ人同士の直接対決の場もあったそうで、「スペイン内戦は、規模が小さなドイツの内戦でもあり、ドイツ人は固唾を飲んでその成り行きを見守っていた」と語っていました。

80年も前に存在した国際旅団員全員の身元を明らかにするというキホーテ的な夢をみる本プロジェクトにおいては、各国の国際旅団員の家族や友人、関係者からの協力や情報提供が非常に重要な役割を果たしています。もちろん、ジャック白井をはじめとする日本人の国際旅団参加者や国際旅団に関する日本語文献の情報も集めておりますので、何か心当たりの方がいましたら4gatsbooks*gmail.com(*を@に換えてください)まで連絡ください。どうぞ、よろしくお願いいたします。

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