先日、スペイン内戦に関するドキュメンタリー「Economia col·lectiva. L’última revolució d’Europa 共有経済ー欧州最後の革命」を見てきました。

内戦下で起こったアナキスト革命を扱ったもので、実際にどんな変革が行われたのかという革命の中身を詳しく説明しているのですが、これがとても興味深い。

内容をかい摘んで説明すると、1936年7月市民たちの逆襲でフランコ反乱軍にクーデターが失敗に終わると、権力が空白となった機会を利用してアナルコシンディカリズムの労働組合CNTが革命を開始。すでにCNTは5月10日の総会で革命実施を決議して準備を進めていたことから、革命への移行がスムーズに行われてアナキズム革命が始まります。

ここで実践されたのが、資本家を排除して生産手段を労働者の共有物とするEconomia col·lectiva 共有経済です。コミュニズムというとソ連のような国有に基づくものを思い浮かべますが、スペインで実践されたのはアナキズムから生まれた共有に基づくComunisme llibertari 解放主義コミュニズムでした。

カタルーニャでは電力や通信、各種の工場、果ては理容室まで70-80%の産業やサービスが共有化されました。共有化された職場からは経営者と労働者の区別が消え去り、労働者が経営に直接参加する自主運営で生産活動が行われていきます。ちなみにCNTが中心になって行った共有化はあくまで自主的なもので、共有化が強制となったのはカタルーニャ州政府が主導権を握ってからです。

アナキストたちは連帯と相互扶助の原則から、労働者間の競争回避のための同一賃金、業界間の競争回避のためのセクターのグループ化…と、あらゆる競争を回避しながら経済システムを変革していきます。

競争によって効率化を目指す新自由主義とは真逆の発想なのですが、これが上手くいって、生産性は上がり、物価は下がり、仕事を分け合うために失業者が減って労働時間も減る、といいことづくめ。後にフランコ政権すら、その間の生産性の増加を認めざる得なかったそうです。

様々な妨害にあって革命は挫折してしまいましたが、21世紀の今でもカタルーニャには共有経済の伝統が根強く残っていて、それが現在の下からの変革を支える非常に重要な基盤になっています。

現在の資本主義経済システムにおいて共有経済の実践を可能にしているのがCooperativisme 協同組合制度です。組合員を募って事業資金を集めるので、資本家は必要ありません。意思決定は総会で行われ、組合員は出資額や役職に関係なく一人一票を有します。カタルーニャでは19世紀から実践されてきた制度なのですが、失業の問題が一向に解消されない中で労働者が自ら雇用を生み出す方法としても注目されて、経済危機以降に急増しています。

協同組合が金融から教育と幅広い分野で商品やサービスを提供しているおかげで、カタルーニャでは様々な形で搾取を行う大企業に頼らずに生活することがある程度可能になっています。私も電力からマスメディアまで協同組合を利用しているので、今や協同組合なしでは生活がままならないほど。

こうした協同組合の一例として、通信を民主化しようという試みから生まれたEticom Som Connexió エティコム・ソム・コネクシオの推進者メルセ・ボテリャのインタビューを紹介します。

https--farm6.staticflickr.com-5659-21060455139_63510bbfc6_b-500x333ルセ・ボテリャ・インタビュー

社会サービス部門の精神科医としての訓練を受けたメルセ・ボテリャは、人々に尊厳を与える、より持続可能で公正な世界に向かって進む最も効果的な方法は、生産システムと消費を変えることを通じて行われるものだと確信を持っている。以前は組織・チームや人事のコンサルティングの世界で働き、UCOやUABといった大学で教育に関わったこともある。現在は、Eticomの推進者の一人で書記を務めている。

Eticomは、少数支配へのオルタナティブを創設する必要性から現れた通信分野の協同組合です。

―Eticomとは何ですか? どんな必要性から生まれたのでしょうか?

Eticomは電話とインターネットのサービスの協同組合で、通信分野の主権獲得に向かって進もうとするものです。このイニシアチブは、少数が支配する通信業界と行過ぎた資本主義的な考え方へのオルタナティブを創設したいという思いから生まれました。Eticomには責任を持って変革を目指すという意思があります。必要性から生まれたもので、より公正で人間的な世界の創設に貢献したいと考えています。

―Eticomはどんなサービスを提供していますか?

今の時点でEticomは携帯電話のサービスを提供していて、近々インターネット接続のサービスの提供を開始します。さほど遠くない将来に、すべての通信分野のサービスを商品化できると思います。

―Eticomはどのように機能していますか?

サービスの商品化を担うものとして動いています。莫大な投資が必要となるためにオペレーターになることはできません。準備作業の大部分はボランティアで行われ、二人でおよそ二年かかりました。現在のところ、協同組合には700人の組合員がいますが、その多くはEticomがサービス提供を開始してから加わりました。

―Eticomの未来はどんなものでしょうか? 今後、全力で立ち向かわなければならない挑戦はなんでしょうか?

Eticomは成長し続けることを望んでいますが、それは段階的かつ責任感のある方法であって欲しいと思います。失いたくない協同組合の価値の一つが、組合員との密なコンタクトです。Eticomは地域的な参入を試みていて、この参入を可能にするために、国(訳注:カタルーニャ) にすでに存在する連帯経済のネットワークを利用したいのです。この方法を用いて、将来の目標は様々な場所で直接組合員に応対できるようにすることで、これはプロジェクトの社会的基盤の拡大を後押しすることにもなるでしょう。Eticomは現実的なオルタナティブになりうると言わなければなりません。社会的重要性と責任感がある上に、市場価格でサービスを提供しているのですから。

新しい組合法は足りないところがたくさんあるものの、良い機会となりうるでしょう。

―カタルーニャには他にも似たような目的の協同組合がありますか?

カタルーニャには、この分野で公正さと責任感という観点から活動している共同組合がいくつもあります。EticomはSom Energia(再生可能電力)、Arç Cooperativa(保険)、Coop 57やFiare(ともに金融) といった協同組合と関係を持っています。こうした協同組合の数々は私たちも含めて、Més Opcions(さらなる選択肢)という名の下で結びついています。この結びつきによって、一つの協同組合の組合員であれば、他の協同組合のサービスを組合員にならなくても利用することができるので、 責任ある消費を最大限まで押し進めることができます。

―通信に関して、他にも実践はありますか?

インターネットの分野にはGuifibaixがいます。このグループは収益性が低いために通信会社がサービスを提供していなかった地域にサービスを提供する必要があったことから生まれました。Guifibaixは非常に高い技術のある協力者を数多く抱えています。Eticomが全地域に展開していく上では、こうした人々が大きな助けとなるでしょう。私たちは多くの価値観を共有しています。

―概して、カタルーニャにおける協同組合制度の状況はどうでしょうか?

カタルーニャでは協同組合を大きく三つのグループに分けることができるでしょう。多くの組合員を抱えて民主主義の程度が低い大きな組合、運営しやすさから小さな組合、明確な社会的意志のある変革を目指す組合です。三つ目に入るのがEticomであり、こうした意味において人間のための経済を行う必要性を意識している社会ネットワークの中での拡大を目指しています。

―協同組合の世界からは、最近可決された新しい共同組合法(訳注:今年7月に法律が改正されて、人数や資本金が下がり協同組合が創設しやすくなった。一方で、二人の組合は共有という概念から外れないか、など協同組合の存在意義の形骸化を指摘する声もある)はどのように見えますか?

協同組合の世界、そして連帯経済ネットワークからは、協同組合制度を支援するツールと見えますが、社会変革を目指すようなものではありません。とは言うものの、 啓蒙を行っていけば自覚のない消費から完全に意識的で変革的な行動に変えることは可能です。従って、良い機会となりうるでしょう。

Entrevista a Mercè Botella Impulsora d’Eticom Som Connexió(La Riuada 2015年9月8日版より )

カタルーニャの変革を支えているのは、このような日常生活を変える試みです。そして、資本主義を批判を消費行動で実践できるカタルーニャの社会があるからこそ、反資本主義を掲げる独立主義左派のCUPが8%近くの票を集めることが可能になっています。

元CUP州議会議員フェルナンデスは「現在の世界を再生産するか、それとも世界を変えるかの分岐点は日常生活における些細な行動の中にある」と言いました。一人一人の日常生活の変化が社会を変え、社会の変化が政治を変える。ラディカルで根本的な変革プロセスは、経済という社会に必要不可欠なシステムを見直すところから始まるようです。

広告

経済から世界を変える” への1件のフィードバック

コメントは受け付けていません。