ギリシャからの二つの声

主要メディアの執拗なネガティブキャンペーンにもかかわらず、ギリシャの人々はSyrizaに未来を託しました。Syrizaは何をしようとしているのか? ギリシャの人々はどうして「極左」と呼ばれるSyrizaを支持したのか? ギリシャから二つの声をお届けします。

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「Syriza」という党名ですが、ギリシャ人ジャーナリスト、マキリによると「急進(ラディカル)」と訳される部分は「革新」の意味で、さらに現在のSyrizaの政策は中道左派。党名の日本語訳「急進左派連合」は誤解を招くものだと思うので、Syrizaという表記で統一しました

その1)2015年1月16日付けスペインのエル・パイス紙に掲載されたSyriza代表ツイプラスの署名記事

欧州での変革は南から始まる―アレクシス・ツィプラス

 ギリシャとスペインの有権者には政治を転換させることが可能だ もっと読む

迫る資本主義の終焉

先週バレンシア州政府が中央政府への支援要請を決定したことで、スペイン経済に対する市場の不安感が再燃しました。リスクプレミアムが640を突破し、スペイン国債の10年ものの利回りが7.5パーセントに高騰という非常事態を前にして、為す術のないスペイン政府は会見も行わず口をつぐんだまま…。

今日になって、ようやく経済相デ・ギンドスが重い口を開きましたが、具体的な対策を提示することはありませんでした。彼は明日ドイツ経済相を訪問することになっているそうで、すべては欧州中央銀行頼みというのが実際のところのようです。

そんな中で注目を集めているのが、15-M運動の誕生にも大きな影響を与えた経済学者で作家のJosé Luis Sampedroホセ・ルイス・サンペドロの発言です。

画像ホセ・ルイス・サンペドロ『資本主義システムは終わる』

作家は「もちろん危機は終わるであろう。しかし、それは私たち全員の苦しみと引き換えになるだろう」と語った。

作家ホセ・ルイス・サンペドロは資本主義システムが「終わる」ことを確信している。なぜなら、西欧世界は若者が主役の「真の変貌」に直面しており、彼らはすでに「別の時代に」生きているからだ。彼らはお金を稼ぐことに固執するしか能がない人々とは異なると彼は語る。

サンペドロは経済危機が労働者たち苦しみと引き換えに解決することを嘆いた。

彼の見解によると、西欧世界は変貌の過程にあり、この変貌によって、15世紀に始まったお金の段階から脱出することになるだろう。それは部分的には、現在の技術と社会の革新のおかげである。

その進行とそれがもたらす結果は「資本主義者には理解できないものである。なぜなら彼らはお金を稼ぐことに固執し続け、彼らの銀行、紙幣、証券に固執し続けているからだ」。

しかし、このシステムは「終わる」。その証拠は反抗し、抗議する若者たちが「すでに別の時代に生きている」ことだ。一方で、子供たちは「もっと先を」行っている。彼らはもうもう一つの世界の人間なのだ」

「もちろん危機は終わるであろう。しかし、それは私たち全員の苦しみと引き換えになるだろう。なぜなら、銀行を満たすために投入しようとしているお金の半分で、この世界で最も重要な分野、教育と医療における削減を回避することができたはずなのだから。」と作家は結んだ。

(Publico紙『José Luis Sampedro: “El sistema capitalista se acaba”』より)

スペイン救援とドイツ

以前の記事で取り上げたスペインの救済に関連して、経済学者のビセンス・ナバロが非常に興味深い指摘をしているので、ご紹介します。

スペイン救済で利益を得たドイツの銀行- ビセンス・ナバロ

スペインにおける現在の経済危機の原因の一つは、不動産バブルの破裂である。金融資本(銀行、貯蓄金庫、保険会社などの金融機関)と不動産業界が共謀して、このバブルを作り出したのだ。この10年間でスペインにおいては、フランス、英国、ドイツを合せたよりも多くの住宅が建設された。スペインのGDPのおよそ9パーセントと推定される膨大な数の住宅が建設されたにもかかわらず、住宅価格は150パーセントと急騰、給与よりもはるかに早い速度で上昇した。これは行過ぎた投機の結果だ。スペインの銀行や金庫、スペイン銀行、そしてスペインだけでなくヨーロッパの公的機関はこのことを自覚していた。住宅価格が給与よりも急速に上昇したことを理解するには、この二つの価格の推移(住宅購入者の大部分は給与から資金を出す)を比較するグラフを見るだけで十分だ。この価格差はローンで埋めようとされた。こうして、膨大な数の家庭が負債を抱えることになったのだ。

こうしたことはみな、予めわかっていた。起こりつつあることを察知して、回避することもできたであろう。しかし、スペイン銀行(在籍する専門家が警告したにもかかわらず)も、スペイン国家もなんの対策も取らなかった。スペイン政府はこの10年間、単なる投機とその破裂に基づいた不動産バブルに備えることもなく、無責任に行動したと指摘したドイツ首相アンゲラ・メルケルには理があった。

しかしながら、メルケルは重要な点を忘れていた。忘却によって、スペインで起こったことに対する批判の中に、彼女はドイツ政府とドイツの銀行を含めることができなかった。彼女が忘れていたのは、ドイツの銀行がこの不動産の激増において決定的な役割を果たしていたことだ。不動産激増の養分となった資金の大部分はドイツの銀行から来ていた。実際、不動産バブルの破裂は、ドイツの銀行がスペインの銀行や貯蓄金庫への融資を中断したときに起こった。ドイツの銀行が米国の銀行に由来する有毒な金融商品に感染するのを恐れた結果、全ての貸付けの流れが停滞したのだ。こうして、貸付けが中断してスペインの不動産バブルが破裂、経済活動が大幅に停止し、政府(中央政府だけでなく自治州政府も)の収入が急落したことで、政府の公的赤字が生まれた。

この赤字は公的支出の増加で生まれたものではなく、政府の収入が減少したことで生まれたのである。実際には、危機が始まった2007年スペイン政府の会計は黒字であった。ラホイが言うように、スペインの公的赤字が危機の原因なのではない。その反対で、公的赤字は経済成長と国家への収入の不足の結果なのだ。

削減を含む緊縮措置(スペインにおいては資金が乏しい福祉国家への正面攻撃となっている)は全て、ドイツ、フランス、英国、ベルギーなどの銀行へ返済するために行われているが、こうした銀行は不動産バブルの間に莫大な利益を得てきた。その莫大な利益は現在も継続している。実際には周縁国(スペイン、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド)の銀行危機は、ドイツの銀行にとって非常に好都合に作用している。危機から逃げるためにこうした国々から中央、とりわけドイツに向かう資金の流れ(つまりお金)があるのだ。データを見るだけでわかる。ドイツ銀行総裁のヨゼフ・アッカーマンによると、この銀行の利益は2011年には80億ユーロ(そのうち8万ユーロが彼の報酬だ)という身震いするような金額に達したという。現実に、スペイン(そして他の周縁国)において若者の50パーセントに仕事がないという、失業率が懸念を通り越すようなレベルにまで達し、医療や教育の分野で残酷な削減(これ以外には呼びようがない)に苦しんでいる一方で、コーン・ヘリナンが『CounterPunch (15.06.12) (“Greed and the Pain in Spain”)』誌で指摘したように、ドイツ銀行の利益は3年間(2009-2011)で67パーセントも上昇した。

こうしたデータはすべて、ドイツの銀行がスペイン(とアイルランド)の不動産バブル、そして周縁国の金融危機から巨額の利益を得たことを明白に示している。スペインや他の周縁国において庶民クラスは、ドイツなどの銀行に支払を行うために、巨大な犠牲を課されている。スペインの銀行を救うという目的の有名な1000億ユーロという救援融資は、貸付を保証するためのものではないない。貸付はないし、今後もありえない。これもドイツの銀行に返済するためなのだ。そして、今までに何度も指摘してきたように(著者のブログwww.vnavarro.orgを参照のこと)、ドイツ銀行が自分たちの政策を押し付けるために利用していると道具が欧州中央銀行である。これは中央銀行なんかではなく、ドイツの銀行とドイツ連邦銀行のロビーなのだ。

救援融資は、ドイツ銀行率いる欧州金融システムに仕える欧州委員会の経済学者たちがスペインに課している多くの干渉の中で最新のものだ。ドイツの金融大臣ヴォルフガング・ショイブレ(ラホイに背いて)が上手く言い表したように、救援融資とは欧州中央銀行、欧州委員会、IMFが財務改革や財務政策、スペインのマクロ経済を直接監査することを意味しており、こうして、スペインはドイツの植民地と化すことになる。そして、これらは全て「素晴らしく愛国的な」スペイン政府の協力で行われる。

それではなぜ、この政府は明らかな主権の喪失を意味するこうした政策に協力するのであろうか? 答えは明白だ。スペインにおいて右派が常に欲してきたことを実現するために、(代替案はないと主張して)こうした外部からの命令が利用できるから。それはつまり、労働者の世界を弱体化させて、福祉国家を民営化すること。この政府の望みは、ドイツ連邦銀行総裁イェンス・ヴァイトマンが上手く定義した救援の目的と一致しているのだ。彼が改革は労働改革(つまり賃金の引き下げ)と公的サービスの民営化(つまり福祉国家の解体)に特に力を入れるべきだと語ったエル・パイス紙上での発言に、これ以上ないほどはっきりしている。実に明白だ。

Vicenç Navarro – La banca alemana, beneficiaria del “rescate” español Publico 2012.06.21

ユーロ暴落と欧州中央銀行

欧州経済危機』のカテゴリーを新設して、過去の関連記事もまとめました。

年が明けてもユーロの暴落は止まりません。今月号のル・モンド・ディプロマティック・スペイン語版で、ベルナール・カセンが「2011年12月8日から9日にかけてブリュッセルで開催された欧州委員会は『ユーロ、さらにはEUの存続をかけた最後のチャンス』と宣伝された。前回までと同じようにその理事会も、大統領、首相、大臣、顧問など何百人という人員を動員した。それは桁外れなメディア的、政治的ドラマという注目の的だった。舞台上のこの一大ショーは誰に向けられていたのか? ヨーロッパの市民? そんなはずはない…」と皮肉たっぷりに指摘しているように、最後のチャンスのはずであった首脳会議が恙無く終了した後も、ユーロ通貨は信用を回復するどころか、下落の一途を辿っています。それもそのはず、ブリュッセルにおいて、欧州債務危機の根本的な解決につながるような合意は、何一つなされなかったのですから。

だからといって、危機を抜け出すための有効な解決策は未だ見つかっていないのかというと、そうではないのです。随分前から一部の経済学者は債務危機の根本的な解決には欧州中央銀行の行動が鍵となると主張しています。その中の一人がバルセロナ大学の経済学者Vicenç Navarroビセンス・ナバロ。反新自由主義の立場に立つ経済学者の一人で、アルカディ・オリべレスと同様に早い段階から15-M運動への支持を表明していました。

ナバロは反フランコ活動によって亡命を余儀なくされ、35年を過ごした米国をはじめ、スイス、英国の大学で教鞭を取ってきました。さらには、国連や世界保健機関(WHO)、スペインの社会党政権、サルバドール・アジェンデ時代のチリ、医療改革中のキューバなどの顧問を務め、ヒラリー・クリントンが率いたホワイトハウス医療改革チームにも名を連ねていた人物。

公式サイトに発表された記事から、現在のユーロシステムが抱える問題を指摘した部分を抜粋して訳出しました。

大手マスメディアがひた隠しにしてきた事実だが、基本的にユーロ通貨の価値は、インフレのコントロールを何よりも優先する欧州中央銀行(ECB)の行動に左右される。事実上インフレの抑制が彼らの唯一の目標で、今までそれを達成してこれたのは、通常の中央銀行が行う役割つまり、経済を刺激するという役割を切り捨ててきたためだ。つまり、ユーロ通貨を救うためにECBが、自らの行動によってユーロ圏の国々の経済を破壊し、それらの国々に大不況を運命づけているのだ。この大不況はまもなく大恐慌になるだろう。

ECBは、ユーロ圏において貨幣の発行ができる唯一の銀行であるにもかかわらず、発行額を少なく抑えることで、低いインフレ率を維持している。さらに物事を複雑にしているのが、銀行の利息を高金利に保つことで、融資を受けることを困難にしていることだ。その結果として経済活動は縮小し、経済成長は鈍化、不況が顔を現す。言い換えれば、ECBはユーロを救うために、ユーロ圏の経済を破壊していると言えるのだ。

『ユーロを救わなければならない』というフレーズの裏には、極めて具体的な特定の利害がある。銀行、とりわけ欧州の銀行の利益を護り続けること。だからこそインフレ抑制が彼らの唯一の目的となる。このことによって、低いインフレ、大量の失業者、後退する経済という現在の私たちの状況が説明ができるだろう。すべて、ユーロというよりは、銀行を救うためなのだ。銀行にとって、現在の不況は非常に都合がいい。ベルギーの労働組合の顧問を務める経済学者ロナルド・ヤンセンによると、ユーロ圏での銀行の利益はと2010年の500億ユーロ、今年の前半だけで270億ユーロという天文学的な数字に到達したという。

こうしたことは全て、ユーロ圏の多くの国における貧困の激増、大多数の人々の購買力の顕著な低下という犠牲の下に行われているのだ。スペインでもこれと全く同じことが起きている。最新の世論調査によると、スペイン人の70パーセントがユーロはスペインにとってマイナスとなったというのも理に適っている(こちらに関しては前回の記事も参照ください)。スペインにとってユーロの継続が望ましいのかどうかについて、スペインにおいての議論を始めた方がいいのであろう。

スペイン通貨としてユーロの使用を継続する方がいいという主張もあるが、それには代償もついてくる。その中には若者の失業率45パーセントのように非常に高くつくものもあり、こういったものに関して議論を行うべきだろう。しかしながら、今までの議論の中にはこうした代償について強調する声は見られない。それは存在しないからではなくて、そうした意見を支持する著者は、大手マスメディアの中に意見を発表するスペースを持たないからだ。このように、スペインの民主主義は不完全なものなのだ。

(『EL EURO NO ESTÁ EN PELIGRO. EL BIENESTAR DE LA POBLACIÓN SÍ QUE LO ESTÁ』より)

ちょうど、この週末にスペインの大銀行Bankia総裁ロドリゴ・ラトの給与が話題になっていました。年間234万ユーロ(約2億3400万円)とIMF(国際通貨基金)専務理事時代の28万5000ユーロと比べると、なんと8倍もの収入となったことが明らかになったからです。

「(金融危機によって)合併したスペインの銀行を指揮するのは、ワシントンから世界経済を見守るよりも高く評価される」と始まる12月31日付Publico紙の記事によると、他のスペイン5大銀行の総裁の報酬額はアンヘル・ロン(Banco Popular)123万ユーロ、フランシスコ・ゴンサレス(BBVA)530万ユーロ、エミリオ・ボティン(Santander)490万ユーロ、イシドロ・ファイネ(Caixa)260万ユーロで、ロトの収入は下から2番目になるのだとか。

こうした銀行の莫大な利益を護るために、欧州危機がECBの介入で意図的に引き伸ばされているという見方もあります。というのも、金融業界出身者が政治の中枢に配置するということが、欧州内で広く行われているからです。『金融による国家クーデター』と呼ばれるもので、スペインでも行われたことは以前の記事で紹介した通りです。現在の状況を12月31日付Publico紙を参考にまとめてみると…

  1. オーストラリア―連邦首相Werner Faymann(オーストリア銀行出身)、中央銀行総裁Ewald Nowotny(BAWAG PSK銀行最高執行役員)
  2. ブルガリアー金融大臣Simenon Djankov(世界銀行の金融責任者)
  3. キプロスー金融大臣Charilaos G. Stravrakis(プライベートバンクのキプロス銀行役員)
  4. ギリシャー首相Lukas Papadimos(ギリシャ銀行総裁、欧州銀行副総裁)、中央銀行総裁George Provopoulos(Piraeus Bank及びEmporiki Bank最高執行役員、Alpha Bank役員)
  5. デンマークー経済担当大臣Margrethe Vestager(投資ファンドID-Sparinvest A/S顧問)
  6. スペインー経済大臣Luis de Guindos(リーマン・ブラザーズのスペイン・ポルトガル第一経営責任者、Banco Mare Nostrum理事)
  7. スロバキアー経済大臣Mitja Gaspari(中央銀行総裁)
  8. エストニアー首相Andrus Ansip(ヘッジファンドInvestment Fund Broker Ltd.最高執行役員)、金融大臣Jürgen Ligi(EVEA Bank重役)
  9. ハンガリーー中央銀行総裁András Simor(CAIM Investment Bank代表)
  10. イタリアー首相Mario Monti(ゴールドマン・サックス顧問)、経済副大臣Vittorio Grilli(Credit Suisse First Boston幹部)、経済開発大臣Conrado Passera(イタリアの主要銀行の一つIntesa Sanpaola最高執行役員)
  11. リトアニアー金融大臣Andris Vilks(スイスの銀行SEB Unibank取締役)、経済大臣Daniel Pavluts(スイスの銀行Swedbank)
  12. ポーランドー金融大臣Jean Vicent-Rostowski(Banco Pekao幹部)、元首相で現在中央銀行総裁Marek Belka(欧州JPモルガン幹部)
  13. ポルトガルー金融大臣Victor Gaspar(欧州中央銀行高官)、中央銀行総裁Carlos Costa(Millenium BCP、Unibancoなどの取締役)
  14. 英国ー国際開発大臣Andrew Mitchell(投資銀行Lazard役員)、貿易投資局長Stephen Green(HSBCグループ幹部)
  15. チェコ共和国ー中央銀行総裁Miroslav Singer(Expandia Finance役員)
  16. スウェーデンー金融大臣Andres Borg(ABN Amro Bank、SEB Bank)、金融市場大臣Peter Norman(投資ファンドAlfred Berg役員、Carnegie Investment Bank AB顧問)

テクノクラートの台頭により、現在の欧州において16カ国の政府が、言ってみれば政権内に金融ロビー団体を抱える状況になっているのです。債務危機によって銀行が漁夫の利を得ているとすれば…。何度首脳会議が行われても、債務問題の解決が遅々として進まない原因はここにあるのかもしれません。

完璧な大災害−La catástrofe perfecta

これまで3回に渡って今回の欧州危機に関するイグナシオ・ラモネの見解を紹介してきました。簡単にまとめると、

現在の経済危機は銀行などの金融市場の無分別が誘発したもので(どのようにして危機は起こったのか?、国家が借金漬けになったのはその損失を穴埋めするためであった(危機にある新自由主義)。だから、銀行のために銀行からした借金を返済する必要はない欧州経済危機とギリシャ)。

というものです。この主張の根底にあるのが『不当債務』という考え方なのですが、こちらについてはattacこうとう(準備会)のブログの『不当な債務を帳消しにグローバルアクションウィークに寄せて(5)』を参照ください。

ラモネはこうした経済危機に関する一連の議論を、すでに2年以上前の2009年に出版された著書『La Catástrofe Perfecta. Crisis del Siglo y Refundación del Porvenir(完璧な大災害−世紀の危機と未来の再建)』の中で展開していました。

20世紀の80年代新自由主義政策が国際経済を支配し、まるで不老不死の万能薬であるかように扱われた。『完璧な大災害』においてイグナシオ・ラモネは、どのようにして2008年に史上最大の金融暴落が起こるに至ったのかを告発し、経済危機の他に気候変動危機、エネルギー危機、食糧危機と3つの危機が迫っていることを警告する。また、国際地政学における米国の弱体化についても予告し、より公正で民主主義的な土台の上で危機から脱出する方法を提案する。

  • バブル:株式市場に上場された株価の過剰な上昇のことで、必然的に突然の崩壊に至る(『バブルの破裂』)
  • 危機/恐慌:経済の機能や適応の通常のメカニズムが停止することで、経済活動の一分野で発生する場合もあれば、経済システム全体に影響を与えることもある。影響を受けた経済分野、もしくは経済全体は、変革することなしには、この苦境を回避することはできない。
  • クラック:株式市場価格の突然の倒壊

(Dictionnaire de l’économie, Pierre Bezbakh et Sophie Gherardi, Paris, Larousse-Le Monde, 2000)

という引用から始まるこの著作は、前半が歴史を紐解きながらの経済危機のメカニズムの解説、後半が現在の危機の分析と未来に向けての提案という2部構成。今回の危機は様々な要因がからみあった非常に複雑なもので、解決には相当の年月がかかるだろうという厳しい見通しを語る一方で、この危機を良い世界を目指すために利用しようという、ラモネらしいメッセージが込められています。その中から、現在の状況をぴたりと言い当てている個所を紹介しておきます。

2008年12月、ギリシャの若者たちが警察権力に殺害された一人の若者の死に抗議するために、『若者には銃弾、銀行には金』の叫びとともに主要な都市の通りを占拠したのは偶然だろうか? 現在の危機によっていっぱいいっぱいになっているこの国ー他のEU諸国も同様だーでは、民営化が公共部門の労働者を痛めつけ、公務員が徹底的な予算削減の犠牲者となり、大学、年金や医療システムが民営化に脅かされ、給与は凍結されている。激怒したギリシャの若者は、ある教授が「私たちの生活が悪化するのにはもううんざりだ」という言葉で批判した経済社会モデルに対して、辟易していることを表現しているのだ。この同じモデルが他のEU諸国でも機能しているのだから、他の国々においても抗議運動が起こる可能性を排除することができるだろうか?

Foreign Policy誌編集長モイセス・ナイームは「米国の国民感情は『ウォール街の泥棒たち』に対する私的な復讐と、『我々から仕事を奪う移民、我々の雇用をインドに輸出する多国籍企業、ほとんど税金を支払わない富裕層』に対する拒絶から生まれたものだ」のと説明している。

危機は長引くであろう。巨大な社会的痛みを生みだすであろうが、これを無駄にするべきではない。だからこそ、この『機会』を『利用しない』とことがあってはならない。むしろ、最終的に国際的経済システムと不平等で時代遅れの発展モデルを変革するために、この衝撃を利用しなければならないのだ。そして、より公正で、より連帯的で、より民主主義的な基礎の上に、経済システムと発展モデルを再建するのだ。