スペインから見た地中海の危機

balla_3

2016年05月16日にアカデミー音羽で開催されたシンポジウム「G7サミット反対! 搾取も戦争もないもうひとつの世界は可能」で行ったスピーチの内容をまとめたものです。

本日、地中海の移民に関してお話ししようと思ったのは、この問題がもう一つの世界は可能だというスローガンを掲げた90年代末からの反グローバリゼーション運動の、欧州における大きな柱の一つだったからです。

europe_chicyuukai_3

欧州の反グローバリゼーション運動には統一通貨ユーロへの反対不法移民の合法化という二つの柱がありました。あれから10年以上が経過した現在、統一通貨による市場統合であるユーロ圏の問題がユーロ危機となり、不法移民を生み出すシステム、シェンゲン圏の問題が地中海の危機となって、欧州を根底から揺るがしているのは、とても示唆的なことだと思います。

不法移民の問題が柱となった背景の一つが、サパティスタのマルコス副司令官が1997年8月にル・ムンド・ディプロマティクへ寄稿した「第4次世界大戦が始まった」です。 もっと読む

ドイツの命令ーイグナシオ・ラモネ

LMd去る7月13日、ギリシャ首相アレクシス・ツィプラスー傷つき、打ち負かされ、屈辱を与えられたーが公衆の面前でうなだれてドイツ首相アンゲラ・メルケルの命令を受け入れなければならなかったときに、私たちがブリュッセルで見たような、これほどまでにサディスティなシーンを目にするのはホラー映画においてだけだろう。彼はこうして、それによって選出され、まさに今国民投票を通じて市民から追認されたばかりの解放のプログラムを断念することになった。

勝者たちによって世界中のカメラの前でトロフィーのように見せびらかされて、哀れなツィプラスはその自尊心、そしてまたヒキガエルと蛇も飲み込まなければならず、ドイツの週刊誌デア・シュピーゲルまでもが同情して、ギリシャの人々に押し付けた生贄のリストを「恐怖のカタログ」と形容した…。 もっと読む

まともな住居という権利

先月末にスペイン政府は失業率25,02%とフランコ体制後最高値を記録したことを発表しました。3ヶ月前から8万5000人、昨年から79万9800人増えて、失業者数577万8100人。失業はそれだけでも深刻な社会問題なのですが、この裏側にはもう一つ大きな問題が隠れていました。住宅ローン滞納による立ち退きです。

日本も同じだと思いますが、ほとんどの人は月々の給与から返済する計画で住宅ローンを組みます。そのため、失業→住宅ローン返済不能→強制退去という負のスパイラルによって、仕事を失うと同時に住居も失うというケースが続出しています。家賃の支払い不能によるものも含めて、スペインでは日に平均532件の立ち退きが執行されていて、その82パーセントが他に住居を持たない未成年の子供がいる家庭という統計が出ています。

そして、事態をさらに深刻にしているのが、現在のスペインの住宅ローンのシステム。ローン返済不能となると銀行が住居を差し押さえて競売へとなるのですが、不動産市場は完全に冷え込んでいるので、買い手がつかないことがほとんど。その場合には、銀行がローン査定価格の60パーセントで物件を取得し、その取得金額をローン残高から差し引きます。つまり、銀行が物件を取得し、残りのローンの返済も受けられる一方で、返済不能に陥った人は住居を失い、ローン残高+利息+差し押さえや競売の手数料が借金として残るという結果になるのです。

不動産バブルで莫大な利益を得ておきながら、それが弾けて損失が出ると公的資金の投入で私的な負債を公的な債務に変える。さらには、住宅ローン焦げ付きについては、貸付けを行った銀行にも責任があるにもかかわらず、焦げ付きが起こると住宅が手に入るだけでなく、残ったローンの返済も受けられる。銀行は全く損をしないシステムを目の当たりにしているスペインの人々にとって、抗議活動の最大のターゲットが銀行である理由がここにあります。

仕事を失い、住居を失い、返済できるあてのない借金を負う…。こうした状況に絶望して立ち退き執行を前に、10月25日アンダルシアのグラナダで男性、11月9日バスクのバラカルドで女性が自らの命を絶ちました。

(10月25日夜にカタルーニャ広場で行われた追悼集会)

二人目の犠牲者を出して、ようやく重い腰を上げたPP国民党政権は、昨日野党第一党のPSOE社会労働党と対策について協議を行い、木曜日には緊急措置を可決したいとしています。それと対照的に、すでに4年も前からこの問題に取り組んできた団体があります。PAH – Platoforma de Afectados por Hipotecaローン被害者者の会です。

PAHはローン返済不能に陥った人々を支援する団体で、立ち退きを回避のため銀行に交渉を求めるなどのして問題の解決を試みてきたのですが、なかなか交渉に応じない銀行を前にして、2年前から直接行動で立ち退きを阻止してきました。方法は単純。立ち退き物件に大人数で押し掛け、執行人たちが物件に入るのを妨げて、物理的に立ち退きの執行を不可能にするのです。

緑のTシャツを着ているのがPAHのメンバー。ビデオの最後の部分は次回の立ち退き阻止の呼びかけになっていますが、他にもツイッターなどを通して広く参加を呼びかけます。このようにして、PAHは現在までにスペイン全土で463件の立ち退きを阻止してきました。

PAHは現在はスペイン各地で活動していますが、元々は2009年バルセロナで生まれた団体なので、先日もカタルーニャ広場で代表のAda Colauアダ・コラウの話を聞く機会がありました。特に不動産バブルに関する彼女の話が、非常に興味深いものだったので、簡単にまとめておきます。

(「緊縮政策に反対する」というテーマで行われた講演会。左から二人目の女性がアダ)

PAHが活動を始めた4年前は、ローンの返済不能に陥った人を支援するという活動内容をなかなか理解してもらえませんでした。なぜなら、多くの人々が支払えないほどのローンを組んだ本人の自己責任だと考えるからです。しかし、そのローンの金額、つまり住宅の価格が人為的につり上げられたものだとしたらどうでしょうか? 住宅の価格が上昇すると得をするのは、不動産関連業者だけではありません。住宅価格が上がれば住宅ローンの貸付け金額もそれに伴って上がるために、その利息から利益を得る銀行にとっても大きな得になります。こうして、銀行は不動産バブルを煽ってきました。

そして、もう一つの共犯者が政府です。PP政権もPSOE政権も政府は賃貸の条件が悪くなる、つまり持ち家の方が得になるような政策を取って、暗に国民に持ち家を推奨してきたからです。「家賃を払うなんてお金をドブに捨てるようなもの。どうぜ同じような金額を払うのなら住宅を購入してローン返済に回した方がいい」と人々が考えるように、法律を変えてきました。

しかも、ローンによる住宅購入が増えて一番得をするのは国民ではなく、銀行なのです。人々が家賃の支払い分をローン返済に回すことで、今まで得られなかった利益が得られるのですから。

住居は商品ではありません。まともな住居というのは憲法に定められた権利です。権利なのですから、賃貸も購入もどちらも選択肢として人々が自由に選べるのが、本来あるべき状況なのです。ところが、スペインの人々は政府の政策によって住居を購入するという方向に導かれ、さらにその購入金額は不当につり上げられたものだったのです。これも自己責任と言えるでしょうか?

(「銀行のいかさま」に関してはこちらの記事も参照ください)

こうした「不動産バブルと政策の犠牲者」を救済するために、PAHは家を引き渡せば借金がなくなるような法律の改正を議会に求める署名を集めています。実は、こうした通りからの抗議の声を救い上げて、IU左派連合などの野党も対策をとるために法案を提出してきたのですが、今まで4回ともPPとPSOEによって廃案になってきました。それを誰よりも知っているPAHは両党の党首会談を前に、その対策を実行力のあるものとするために3つの要求を発表しています。

  1. 債務者が善意の場合、主住宅として用いている物件の立ち退きを全て停止
  2. 過去に遡ってローンに責任財産限定の適用(物件を引き渡せば債務が残らないようにする)
  3. 金融機関が蓄積している住居を公的賃貸住宅に転用

昨日はまた、スペイン銀行協会AEBが「緊急の必要性」がある場合に立ち退き執行を二年間停止するという声明を出しています。「緊急の必要性」の具体的な中身がわかるまでは何とも言えませんが、銀行側が譲歩したのは金融危機が始まって以来初めての出来事ではないでしょうか。PAHを中心とする人々の通りからのプレッシャーは、少しずつですが確実に状況を変化させています。

29S –PIGSの反乱

昨日9月29日は「Los PIGS se rebelan, que se joda la Troika. No debemos, no pagamos−PIGSが反逆、くたばれTroika 私たちは借金していないし、払わない」というスローガンのもと、リスボン、ローマ、アテネ、マドリッドといわゆるPIGS各国の首都での抗議行動が呼びかけられていました。

マドリッドでは9月25日に続く国会包囲の抗議活動。25日の様子をまとめたこんな呼びかけビデオも制作されました。

まずは、ポルトガルのリズボンでコメルシオ広場がデモ参加者で埋め尽くされ…

@elindignado

数時間遅れて、マドリッドのネプチューノ広場も!!

(Directaより)

広場を埋め尽くしたスペインの人々の思いが詰まったマニフェストをご紹介しておきます。昨夜のネプチューン広場で読み上げられたものの全訳です。

Coordinadora #25sのマニフェスト

去る9月25日私たちは、トロイカと金融市場に乗っ取られた市民の主権を救い出すために、国会の包囲を呼びかけた。大部分の政党の同意と協力によって実施された占領だ。人々に恐怖を抱かせるための絶え間ない脅し、マスメディアによる操作や集中キャンペーンにもかかわらず、何万人という人々呼びかけに応えて、私たちに恐れておらず、団結していて、彼らが辞任して憲法改正手続きが開始されるまで止めるつもりはないことを、大きな声ではっきりと言った。

政府は殴打、工作、逮捕、無差別暴力、負傷者、あり得ないような警察隊の展開で私たちに応えた。しかしながら、それは敗北した。弾圧の映像は世界中を駆け巡り、私たちが示した組織力と伝達力によって、ラホイの国連訪問は完全に影に追いやられてしまった。25日の行為の合法性についての議論はまだ結論が出ておらず、現在スペイン社会はそれを話題にし、議論し、意見し、見解を持つ。私たちは大きな対話を始めた。そして、これこそが私たちが継続していきたいと考える道だ。

政府やマスメディアがどんなに私たちの要求を公の秩序の問題に転化しようとしても、権利を要求するために通りに出ることは政治を行うことであり、デモを行うことは政治を行うことであり、発言することは政治を行うことなのだ。

私たちは学び続けている。今日9月29日もうたくさんだと言い、ますます堪え難いものになりつつある現実にブレーキをかけることを望む何千人という人々で、通りは再び溢れた。さらに今日は私たちの兄弟姉妹、各国の議会を包囲しているポルトガル人、ギリシア人、イタリア人に付き添い、そして付き添われて外に出たのだ。豚 ( PIGS)は彼らであって、私たちは南欧だ。南欧のない欧州はありえない。

私たちは国会の包囲を続ける。社会運動が飛躍することを望み、市民の主権と力、つまり民主主義の回復を中心に据えたいと考えているからだ。この一年半の間に一体となること、集団として考え、行動することを学んだ。予想もしなかったような同盟を結びながら。街を占拠するありとあらゆる色の波。強制退去を阻止する近所の人たち、通りを封鎖する公務員…。今、私たちは複雑な経済や法律の概念を解読すること、自分たちと他の人々に気を配ること、もっと上手く伝えること、ネット上や広場における参加と議論の場や作業の場を運営することができる。権力の暴力的な愚かさを笑い飛ばすこと。それを前にしたとき、次第に私たちは逃走する代わりに耐え忍ぶようになった。私たちはかつての闘争の方法を拡大することを成し遂げ、下から近道なしに一歩一歩進めていきたいと考えるイニシアティブを実行してきた。少数の人々が決断する時代は終わったと私たちは信じているからだ。私たちから未来を奪おうとしている人々を前にして、私たちには私たちが望む社会を決めて構築するための手段もあるし集団の知性もあるからだ。私たちには必要なのは偽の仲介人ではなく、共同体の事項について全ての人々の政治的参加を積極的に促進する集団の資源と道具だからだ。

私たちは私たちを支配すると言う人々にNOを突きつけ、 彼らの借金を払えといった彼らの不公正な押しつけに私たちは服従せず、住居、教育、医療、雇用、民主主義への参加、年金といった集団の権利を護ると言うために国会の包囲を続けると言う。危機の責任者を処罰し、危機を誘発した放火魔たちが報酬を手にする代わりに裁かれるような訴訟を開始するために。

サパテロ政権もラホイ政権も私たちに耳を貸さなかった。どちらも絶対に実行しないと約束した措置を進めて、自分たちに投票した人々を裏切った。彼らは市民に従わず、それをする勇気も関心もない。ラホイ政権は私たちの役に立たないので、私たちはその辞任を要求する。

今日来年度国家の本予算案が提出された。この予算案は、市民が何の口出しもできずにPSOE社会労働党とPP国民党が行った憲法改正の結果である。この予算案は、共同体として危機から抜け出すことを可能にするために社会が必要とするものよりも、不当な債務の支払いにさらに多くの金額を向けている。この予算案は国民主権にとって、民主主義にとって恥ずべきものである。だからこそ、私たちはこれを阻止しなければならない。

私たちは国会で予算が審議されている新しい運動に訴えたいと思っている。私たちは彼らにNOと言うために、問いかけることない統治は終わったと言うためにこの先もここにいたいと思っている。

私たちはまた、犯罪扱いの停止、今だに拘束されている人々の解放、法治国家においては許されない措置によって侮辱され虐待された仲間たちが負わされた告発の撤回も要求する。そして、25日の警察の行動に関しての捜査を開始することを。

この数日間で、私たちにはできることがわかった。自らを組織すること、自分たちを伝えること、私たちのネットワークを使うこと、信用や冷静さ、集団の知性を吹き込むこと。だからこそ、私たちはあなたたちにCoordinadora25Sへの参加を提案する。ここマドリッドだけではなく、あらゆる場所で、このネットワークのあなたたち自身の結び目を組織すること、あなたたちが呼びかけを行う…など。彼らは私たちにもうわずかしか残っていない護るべきものを奪おうとしている。私たちはほとんど全てをこれから作り上げていかなければならない。

私たちに恐怖はない。

恥さらしな予算案。それを私たちは包囲する。

立ち去ってくれ。

もちろん、それは可能だ。

アルゼンチン政府のYPF国有化を巡って

月曜日4月15日アルゼンチンのフェルナンデス大統領がRepsolの子会社である石油会社YPFの株の51パーセントを取得すると発表。それを受けて、スペイン政府はその夜緊急会見を行いました。

会見に姿を現したのはラホイ首相ではなく、ソリア産業相とガルシア=マルガリョ外相の2人。産業相は「アルゼンチン政府の決定はRepsol、つまりスペイン企業、つまりスペインとスペイン政府に対する敵対的な決定である」、外相は「この決定はアルゼンチンとスペインの和気藹々とした友好関係を破壊するものだ」「スペインにとっても、アルゼンチンにとっても最悪の決定であり、ビジネスの分野を制御するべき司法システムにとって最悪のニュースである」と、アルゼンチン政府の行動を厳しく批判し、スペイン政府は数日間のうちにしかるべき措置を取ると語りました。

しかしながら、環境保護団体やIU連合左派はアルゼンチンの決定に理解を示めしています。15-M運動を経てIUの国会議員となった経済学者Alberto Garzónアルベルト・ガルソンがブログに書いた記事に、その理由が簡潔にまとめられていたので、ここでご紹介します。

アルゼンチン政府によるRepsolの子会社YPFの国有化

クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領率いるアルゼンチン政府は、数日前から噂されていたことを是認して、多国籍企業Repsolの子会社YPF社の国有化を発表した。この投稿では、この問題について私たちが今までに発表してきた情報の中から特に重要なものを集めてみた。

第一に、この措置自体に関していくつかのことを明白にしておきたい。というもの、現在のところ情報が漠然としているからだ。詳細を明確にすることなく、「接収(expropiación)」「国有化(nacionalización)」「買収(compra)」と呼ばれている。こうした定義は重要であって、概念を伴うものでなければならない。しかしながら、現在までに入手できる情報によると、事実上はアルゼンチン政府による「国有化」-つまり、今のところその価格は示されていないが、対価が支払われる-ということである。そして、双方の意志による決定ではなく、一方的なものであり、買取価格は指定されていない。

第二に、YPFは多国籍企業Repsolが100パーセント所有する機関ではない。実際のところ、RepsolがYPFの約57パーセントを支配することで最大株主となり、支配権と経営権を有しているが、YPFが行うビジネスの利益を全て得ているわけではない。残りはアルゼンチンの個人資本家や(アルゼンチンや外国資本が有する)流動資本が所有している。

第三に、その歴史が重要だ。YPFは1922年にアルゼンチン国家が設立し、いわゆる調整政策の枠組みにおいて国際機関-とりわけIMF(国際通貨基金)-が後援する民営化プロセスが開始する1992年までは国家名義であった。YPFはRepsol -かつてスペインの公営企業であった-が大部分の株を取得した1999年に民営化を完了した。

1930年代に始まった「輸入代替」の時代を通じて、YPFはアルゼンチン経済の再建において重要な役割を果たした。第二次世界大戦による亡命者を多く引き付けることで、従属主義の新マルクス主義者たちはアルゼンチンを戦後の世界で最も進んだ国の一つに位置づけるような経済構造へと導いた。原料輸出というモデルは、工業が決定的な役割を果たすモデルへと徐々に代替されていき、安定した労働条件と初歩的な社会保護システムを可能にするさらに堅調な成長モデルをもたらした。

軍事独裁と70~80年代の構造危機を経て、カルロス・メネムのアルゼンチン政府が民営化の責任者であったが、民営化プロセスの着想を与えたのはワシントン・コンセンサスの政策であった。民営化とともに、年金の民営化、労働条件を不安定化する労働市場改革などを伴う構造改革が実施され、2000年の深刻な危機が生じる原因となった。アルゼンチンはIMFとその調整政策に対して反抗し、さらには債務の帳消し-対外債務の一部の不払い-に着手して初めて、そうした状況を再び克服することが可能となった。

第四に、Repsolは正確に術語を使えばスペイン企業ではないし、スペイン全国民の所有物ではまったくないのだ。この多国籍企業の50パーセント以上は外国資本(42パーセントは外国投資ファンド-習慣的に大銀行が管理する-、9.5パーセントはメキシコ企業PEMEXに属している)が所有する。残りをスペインの個人資本グループSacyr (10パーセント)、Caixabank (12’83%)のようなスペインの金融機関やスペインの個人資本家が所有している。

第五に、Repsolがスペイン経済に与える利益は僅かだと言える。Repsolは世界中の全利益の25パーセントをスペインで申告し、2010年には実質26.8パーセント税率で9億4900万ユーロ(約1015億4300万円)を納税した。つまり、スペインの給与所得者の納税率に相当する30パーセントすら支払っていないということだ。Repsolは、アルゼンチンやリビアなど事業を行う国々では異なる税率で支払っているが、タックスヘイブンでも事業を有する。そして、その金融取引がスペインにおいて計上されていない可能性は非常に高い。

第六に、Repsolの成長と発展-アルゼンチンでのYPFの民営化に多くを負っている-は、この多国籍企業を形成する全ての人々にとって等しく利益となっているわけではない。1989~2007年の間に計上利益が11.97パーセント増加している一方で、従業員の平均給与は1.71パーセントしか増えていない。つまり、最大の受益者は個人株主-基本的には外国やスペインの大企業-であって、従業員ではなかったということだ。

第七に、Repsol-YPFは短期間で最大利益を追求する-それも株主にとって-私企業であるのだから、その企業的戦略が必ずアルゼンチン経済の発展に関する戦略と共同歩調を取るということはない。このことがまさにアルゼンチン政府が申し立てた理由の一つであり、そのためにこの起業を取り戻して発展の実質的な道具として用いることを望んでいるのだ。

結局、一つの経済現象として語り、適切な観点から分析するべきなのだ。二つの国の国益が対立しているのではなく、アルゼンチンの国益と様々な国籍を持つ私的な経済利益-その中には大きな割合ではないがスペインがいる-が対立しているのだ。だからこそ、この経済措置をスペインに対する攻撃とみなすのはごまかしである。評価額が低すぎる可能性はある-それは後々わかるだろう-ものの、これは合法的な買収である。そして、これは社会の他の部分と利益を分かち合わない経済主体-大企業や銀行-の利益に影響を与えるものだ。

これはスペイン人労働者の闘いではない。今後はアルゼンチン国家の所有となるYPFの運営がアルゼンチンの労働者に利益をもたらすか、それともYPFがアルゼンチンの寡頭支配者のための道具となるのかを見守ることにしよう。しかしながら、それは現在の私たちが頭を痛めるテーマではない。

スペイン政府がRepsolの資本を少々有するスペインの大企業の利益を擁護し、アルゼンチンのような主権国家の国益に対して偏見を持つということは、恥ずべきことである。ましてや政府がスペインの最も不利益を被っている人々に対して、さらなる危機の重荷を課すことになる削減政策を実行している最中に、これが起こったのであれば、なおのことだ。

PP国民党政府が与える心遣いと支援のレベルはポケットの大きさ次第。PPが今行わなければならないことは、最も豊かな人々の利益を護る代わりに、自らの経済政策を立て直して、アルゼンチンを真似て特定の政治的道具を取り戻す経済政策を行うという選択が良いかどうかを熟考することだ。こうした道具はスペイン人全体の役に立つべきであって、様々な金融市場-株式市場もその一つだ-で投機を行うことができる少数の大金持ちのためのものではないのだから。

2012.04.16 La nacionalización de YPF, filial de Repsol, por el gobierno de Argentina