14N―イベリア半島ゼネストに見るピケテロス

11月14日今日は、スペインとポルトガルの労働組合が共同でゼネストを呼びかけた史上初のイベリア半島ゼネストの日。朝からPiqueterosピケテロスと呼ばれる人たちが活動中です。ピケテロスとはPiqueteピケテを行う人たちのことで、Diccionario Manual de la Lengua Españolaという辞書には…

piquete (ピケテ)名詞

  1. ストが宣言されたときに通りを巡回して、労働を妨げるために特定の位置につく人々のグループ。
と定義されています。通常、労働組合が行っているのはPiquete Informativo情報提供ピケテと呼ばれ、仕事に行こうとしている人に行かないように説得したり、営業中の商店に店を閉めてストに参加するように説得する行為のこと。ピケテロスは組合の旗を持って笛やメガホンで大きな音をたて、ピケテ活動中であることをアピールしながら通りを巡回します。

ストに参加しないところは、ピケテロスが近づいてきたらすぐに店を閉められるように、シャッターを半開きにして営業します。

説得を行う情報提供ピケテはストの権利を定めた労働法に認められている合法な行為であるものの、同様にストの日に働く権利も認められているため、ストへの参加を強制するPiquete Coactivo強制的ピケテは違法行為になるとのこと。

(『Cómo es la labor de un piquete informativo』参照)

街の様子を見に中心部に行ってみると、ちょうど二大労組の一つCCOOのピケテロスがバルセロナ株式市場の前で抗議活動をしているところに遭遇。

ピケテロスが活動中のグラシア大通りは閑散としていて、いつもは観光客で一杯のZaraも閉まっています。

並びにある5つ星の超高級ホテル・マンダリンも、ご覧のとおり入り口を閉めています。ホテルも閉まるんですね。

ピケテロスの前進に合せて、グラシア大通りが封鎖されていきます。その後を追いかける州警察。

通りには乗り捨てられたバスが。

ストのときに公共交通機関は、通勤時間に合わせて朝6時半から9時半、夕方4時半から8時半まで最低限の運行を行い、それ以外の運行は行わないことになっています。この時はすでに11時を回っていたので、本来なら市バスの運行は中止されている時間帯。ということで、走っているバスがあると…

と、一斉に取り囲んで、人力でバスを止めてしまうんです。

そうこうしていると、ストに参加中のタクシー運転手たちがやってきて、自分たちの車で通りを封鎖してピケテロスに協力。

横断幕を広げてデモ行進をしながら通りを封鎖して行くグループもありました。

こうしたピケテロスの活動は夕方まで続きます。

まともな住居という権利

先月末にスペイン政府は失業率25,02%とフランコ体制後最高値を記録したことを発表しました。3ヶ月前から8万5000人、昨年から79万9800人増えて、失業者数577万8100人。失業はそれだけでも深刻な社会問題なのですが、この裏側にはもう一つ大きな問題が隠れていました。住宅ローン滞納による立ち退きです。

日本も同じだと思いますが、ほとんどの人は月々の給与から返済する計画で住宅ローンを組みます。そのため、失業→住宅ローン返済不能→強制退去という負のスパイラルによって、仕事を失うと同時に住居も失うというケースが続出しています。家賃の支払い不能によるものも含めて、スペインでは日に平均532件の立ち退きが執行されていて、その82パーセントが他に住居を持たない未成年の子供がいる家庭という統計が出ています。

そして、事態をさらに深刻にしているのが、現在のスペインの住宅ローンのシステム。ローン返済不能となると銀行が住居を差し押さえて競売へとなるのですが、不動産市場は完全に冷え込んでいるので、買い手がつかないことがほとんど。その場合には、銀行がローン査定価格の60パーセントで物件を取得し、その取得金額をローン残高から差し引きます。つまり、銀行が物件を取得し、残りのローンの返済も受けられる一方で、返済不能に陥った人は住居を失い、ローン残高+利息+差し押さえや競売の手数料が借金として残るという結果になるのです。

不動産バブルで莫大な利益を得ておきながら、それが弾けて損失が出ると公的資金の投入で私的な負債を公的な債務に変える。さらには、住宅ローン焦げ付きについては、貸付けを行った銀行にも責任があるにもかかわらず、焦げ付きが起こると住宅が手に入るだけでなく、残ったローンの返済も受けられる。銀行は全く損をしないシステムを目の当たりにしているスペインの人々にとって、抗議活動の最大のターゲットが銀行である理由がここにあります。

仕事を失い、住居を失い、返済できるあてのない借金を負う…。こうした状況に絶望して立ち退き執行を前に、10月25日アンダルシアのグラナダで男性、11月9日バスクのバラカルドで女性が自らの命を絶ちました。

(10月25日夜にカタルーニャ広場で行われた追悼集会)

二人目の犠牲者を出して、ようやく重い腰を上げたPP国民党政権は、昨日野党第一党のPSOE社会労働党と対策について協議を行い、木曜日には緊急措置を可決したいとしています。それと対照的に、すでに4年も前からこの問題に取り組んできた団体があります。PAH – Platoforma de Afectados por Hipotecaローン被害者者の会です。

PAHはローン返済不能に陥った人々を支援する団体で、立ち退きを回避のため銀行に交渉を求めるなどのして問題の解決を試みてきたのですが、なかなか交渉に応じない銀行を前にして、2年前から直接行動で立ち退きを阻止してきました。方法は単純。立ち退き物件に大人数で押し掛け、執行人たちが物件に入るのを妨げて、物理的に立ち退きの執行を不可能にするのです。

緑のTシャツを着ているのがPAHのメンバー。ビデオの最後の部分は次回の立ち退き阻止の呼びかけになっていますが、他にもツイッターなどを通して広く参加を呼びかけます。このようにして、PAHは現在までにスペイン全土で463件の立ち退きを阻止してきました。

PAHは現在はスペイン各地で活動していますが、元々は2009年バルセロナで生まれた団体なので、先日もカタルーニャ広場で代表のAda Colauアダ・コラウの話を聞く機会がありました。特に不動産バブルに関する彼女の話が、非常に興味深いものだったので、簡単にまとめておきます。

(「緊縮政策に反対する」というテーマで行われた講演会。左から二人目の女性がアダ)

PAHが活動を始めた4年前は、ローンの返済不能に陥った人を支援するという活動内容をなかなか理解してもらえませんでした。なぜなら、多くの人々が支払えないほどのローンを組んだ本人の自己責任だと考えるからです。しかし、そのローンの金額、つまり住宅の価格が人為的につり上げられたものだとしたらどうでしょうか? 住宅の価格が上昇すると得をするのは、不動産関連業者だけではありません。住宅価格が上がれば住宅ローンの貸付け金額もそれに伴って上がるために、その利息から利益を得る銀行にとっても大きな得になります。こうして、銀行は不動産バブルを煽ってきました。

そして、もう一つの共犯者が政府です。PP政権もPSOE政権も政府は賃貸の条件が悪くなる、つまり持ち家の方が得になるような政策を取って、暗に国民に持ち家を推奨してきたからです。「家賃を払うなんてお金をドブに捨てるようなもの。どうぜ同じような金額を払うのなら住宅を購入してローン返済に回した方がいい」と人々が考えるように、法律を変えてきました。

しかも、ローンによる住宅購入が増えて一番得をするのは国民ではなく、銀行なのです。人々が家賃の支払い分をローン返済に回すことで、今まで得られなかった利益が得られるのですから。

住居は商品ではありません。まともな住居というのは憲法に定められた権利です。権利なのですから、賃貸も購入もどちらも選択肢として人々が自由に選べるのが、本来あるべき状況なのです。ところが、スペインの人々は政府の政策によって住居を購入するという方向に導かれ、さらにその購入金額は不当につり上げられたものだったのです。これも自己責任と言えるでしょうか?

(「銀行のいかさま」に関してはこちらの記事も参照ください)

こうした「不動産バブルと政策の犠牲者」を救済するために、PAHは家を引き渡せば借金がなくなるような法律の改正を議会に求める署名を集めています。実は、こうした通りからの抗議の声を救い上げて、IU左派連合などの野党も対策をとるために法案を提出してきたのですが、今まで4回ともPPとPSOEによって廃案になってきました。それを誰よりも知っているPAHは両党の党首会談を前に、その対策を実行力のあるものとするために3つの要求を発表しています。

  1. 債務者が善意の場合、主住宅として用いている物件の立ち退きを全て停止
  2. 過去に遡ってローンに責任財産限定の適用(物件を引き渡せば債務が残らないようにする)
  3. 金融機関が蓄積している住居を公的賃貸住宅に転用

昨日はまた、スペイン銀行協会AEBが「緊急の必要性」がある場合に立ち退き執行を二年間停止するという声明を出しています。「緊急の必要性」の具体的な中身がわかるまでは何とも言えませんが、銀行側が譲歩したのは金融危機が始まって以来初めての出来事ではないでしょうか。PAHを中心とする人々の通りからのプレッシャーは、少しずつですが確実に状況を変化させています。

いかさま銀行家―イグナシオ・ラモネ

いかさま銀行家―イグナシオ・ラモネ

まだ知らないでいた人々に、この危機は金融市場が現在の欧州経済の主人公であることを示している。それが意味するのは根本的な変化だ。つまり、権力は政治家から株式市場の投機家やいかさま銀行家の一団へと移ったということ。

日々、市場は莫大な金額を動かしている。例えば、欧州中央銀行によればユーロ圏の国債だけで約7兆ユーロ。市場という集団が日々行う決断には、政府を崩壊させ、政策を発し、人々を服従させる力があるのだ。

さらなる悲劇的は、こうした新しい『世界の主たち』は、公共の利益ついては微塵も気にかけない。連帯は彼らの問題ではない。福祉国家を護るなどなおさらのこと。彼らの動機となる唯一の合理性は強欲なのだ。強い欲望に動かされた投資家と銀行家は、ハゲタカのような気質を有してマフィアのように振舞うところまで行っている。そして、全くと言っていいほど処罰されない。

2008年の危機勃発-大部分はかれらが引き起こした-以後、市場を規制し、銀行家を正道に戻すことができた真剣な改革は一つもない。『システムの無分別』に対してあらゆる批判が申し立てられているにもかかわらず、金融の登場人物の多くの振る舞いは相変わらず厚かましいままだ。

銀行が経済システムにおいて鍵となる役割を果たしているのは明白だ。そして、その伝統的な役割―貯蓄の奨励、一般家庭への貸付、企業への融資、商業の促進―は、建設的なものであることも。しかし、1990から2000年代にあらゆるタイプの投機活動や投資を加えた「ユニバーサルバンク」というモデルが普及してからというもの、預金者にとってのリスクだけでなく、不正、詐欺、スキャンダルもまた倍増した。

例えば、 最も恥知らずな事例の一つを思い出してみよう。その主役は、現在金融の世界を支配している強大な米国の商業銀行ゴールドマンサックスだ。2001年ゴールドマンサックスは、アテネが要件を満たして欧州統一通貨ユーロに加入できるように、ギリシャが粉飾決済を行うのを手助けした。しかし、6年も経たないうちに、そのごまかしが発見されて、現実が爆弾のように炸裂した。その結果は、『国土一つがほぼ丸ごと債務危機に陥った。ギリシャという国が略奪されて跪いている。景気後退、大量解雇、労働者の購買力の喪失、構造改革と社会福祉という生け贄。緊縮計画と貧困』。[1]

これほど有害な詐欺の首謀者はどんな懲罰を受けたのだろうか?元ゴールドマンサックスの欧州副代表、つまりこの詐欺に精通していたマリオ・ドラギは、欧州中央銀行(EBC)総裁というご褒美をもらった…。そして、ゴールドマンサックスは粉飾決済の見返りとして6億ユーロを受け取った…。こうして、一つの原則が確認できる。銀行が組織した巨大な詐欺に関して言えば、無処罰がルールである。

何千というスペインの預金者は、上場初日のバンキアの株価と比較して、このことを確認できる。信頼性が全くないこと、そして格付け機関によるとその株価はすでにジャンク債に向かっていることはわかっていたのだ…。

預金者は元国際通貨基金(IMF)代表で当時のバンキア総裁のロドリゴ・ラトを信用した。彼は2012年5月2日(市場からの圧力を前にして辞任する5日前、そして間もなく破産を避けるために国が235億ユーロを投じなければならなくなった)「私たちは支払い能力の観点からも、流動性の観点からもとても頑健である」と断言することを躊躇しなかった…。[2]

その一年前にも満たない2011年7月に、バンキアは欧州銀行監督機構(EBA)が欧州の大手金融機関91社に対して実施した『ストレステスト』を外見上パスしていたことは事実だ。最大限のストレス状態で最低5パーセントが求められるコアTier1比率(最も耐性を有する資本)で、 バンキアは5.4パーセントを獲得していた。[3] このことから、私たちの銀行の流動性を保障する役割を担う欧州の機関EBAの無能さと不適格さがどんなものかわかるだろう…。

銀行の厚かましさについて証言できる他の人物は、スペインにおける優先出資スキャンダルの犠牲者たちだ。この詐欺の影響で 70万人以上が経済的な損失を被った。彼らに定期預金と似たようなものを手にするのだと信じさせた…。しかし、優先出資は銀行預金保障基金でカバーされていない金融商品である。これらには―もし流動性がなくなった場合に―元本の返還も発生した利息の返還も義務づけられていない。

このペテンはまた、銀行の詐欺の犠牲者であるスペインの預金者は、スペイン中央銀行からもスペイン証券取引委員会(CNMV)からも庇護を得られないことを暴いた。[4] 言うまでもないことだが、削減と緊縮政策で絶え間なく市民を痛めつける一方で、銀行には膨大な支援を続けている政府の庇護もない。スペインの銀行システムを支援するために、マリアノ・ラホイはEUに1000億ユーロもの融資を要請した。そうしているうちにも、スペインの銀行は莫大な資本の流出を助け続けている…。9月までに2200億ユーロが公式にスペインから流出したと見積もられる…。[5] スペインの銀行システムを救うために欧州に要請した融資の二倍を越える金額だ…。

だが、スキャンダルはここで終わらない。この数ヶ月間も銀行の詐欺は止んでいなかった。HSBCはメキシコの薬物麻薬取引のマネーロンダリングで告発された。JPモルガンは法外なリスクを承知で途方もない投機を企てた結果、75億ユーロの損失をもたらして、何十人もの顧客を破産させた。同様にナイト・キャピタルも、パソコンで自動的に投機を行うプログラムの欠陥が原因で、一夜にして3億2300ユーロを失った…。

しかしながら、世界規模で人々を最も苛立たせているのは、Liborスキャンダルだ。なんのことだろうか? 英国銀行協会は毎日ロンドン銀行間取引金利、またはイニシャルからLiborと呼ばれる銀行間レートを提案する。このレートの計算を実施しているのがロイター通信で、毎日16行の大手銀行に対して融資を得ている利率を質問する。そして、平均値が決まる。主要な銀行間でお金を借りるレートであるから、Liborは世界中の金融システムが参考とする基本値となっている。とりわけ、例えば、一般家庭のローンのレートを決定するために用いられる。ユーロ圏においてLiborに相当するのがEuroliborで、約70行の大手銀行の活動に基づいて計算される。世界中でLiborはおよそ350兆ユーロの貸付けに影響を与えている…。このレートのあらゆる変動―どんなに小さなものであっても―が、大規模な事件となりうるのだ。

この詐欺の中身は?(Liborの決定の際に参照とされる銀行の)何行かが共謀し、レートに関して嘘をつくことを決めて、この方法でLiborとそれから派生する全ての契約、つまり家庭や企業への融資契約を操作していたのだ。それも何年間にもわたって。

捜査によって、10を越える国際的な大手銀行―バークレイズ、シティグループ、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行、HSBC、クレディ・スイス、UBS、ソシエテジェネラル、クレディ・アグリコル、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド―が組織してLiborを操作していたことが明らかになった。

この巨大なスキャンダルは、犯罪が国際金融の心臓部そのものにあることを証明した。そして、おそらく何百万という家族が不当な利息でローンを支払ったことも。住居を諦めなければならなかった人もたくさんいる。人為的に操作された融資を返済することができなかったために、自宅から追い出された人も…。[6] これに関してもまた、市場が正しく機能するように目を光らせる役目を負った機関は見て見ぬふりをしていた。わずか数人の共犯者を除いては誰も処罰されていない。[7] 加担していた銀行は全て、今もビジネスを続けている。

民主主義はこの無処罰にいつまで我慢することができるのだろうか?1932年の米国において、イタリア移民の息子からニューヨーク検事になったフェルディナンド・ペコラは、 ハーバート・フーヴァー大統領から1929年の危機の原因における銀行の責任の調査に任命された。彼の報告書は圧巻だった。『銀行家ギャングスター』を評するために『バンクスター』という用語を提案。この報告書に基づいて、フランクリン・ルーズベルト大統領は市民を投機の危険から護ることを決断した。全ての銀行を処罰し、「グラス・スティーガル法」を課し、貯蓄銀行と投資銀行という二つのタイプの活動を両立不可能(1999年まで)とした。 ユーロ圏のどの政府がこのような決断を下すのだろうか?

(訳・海老原弘子)

[1] Eduardo Febbro, “El gran truco que usó Goldman Sachs con Grecia”, P.12, Buenos Aires, 13 de marzo de 2012.

[2] El País, Madrid, 2012/5/2.

[3] その嘆かわしい報告書に基づいて―わずか15ヶ月前のこと!―、スペインの銀行システムは『世界で最も堅固なもの』の一つだと断言したアナリストもいた…。例えば「よく参照される新聞(訳注: スペインでクオリティペーパーとみなされているEl País紙のこと。外国資本が入ったことで「新自由主義のメッセンジャーと化した」とラモネは度々批判している)」の一つはこう書いた。「事実、スペインの大手銀行は、今後数年間に渡って起こると仮定される経済の極端な悪化に耐えるために必要とされる資本要件を大きく上回っている」 (El País, Madrid, 2011/7/15)

[4] 様々な組織が犠牲者に法律相談を提供している。例えば la Asociación de Usuarios de Bancos, Seguros y Cajas de Ahorro (ADICAE) (adicae.net)や la Unión de Consumidores de España (www.uniondeconsumidores.info)が相談を受け付けている。

[5] Cinco días, Madrid, 2012/10/21.

[6] これに関して最も乱暴な法律を有する国スペインにおいては、2008年に危機が始まって以来、40万以上の退去―つまり、強制的に住居などの場所から追い出されること―を裁判所が命じた。

[7] バークレイズ銀行は、3億6500万ユーロの罰金を科された。代表マルコス・アギウスが解雇となり、Libor操作の責任者の一人であったCEOボブ・ダイアモンドは、250 万ユーロの補償金と引き換えに辞任した。

Tramposos banqueros : Ignacio Ramonet

(ル・モンド・ディプロマティク・スペイン語版2012年11月号より)

15Mの大きな子供たち

先週末の10月27日土曜日、年金生活者のグループが州大統領マスとの面会を求めて、州庁舎の前で警備を行う州警察と小競り合いになりました。彼らはIaioflautaイヤヨフラウタ。15M運動から派生したグループの一つです。

この日は結成一周年記念を祝うデモを行った後で、市庁舎に向かい『99%のためのカタルーニャ共和国』を要求して、『市庁舎占拠を試みる』という抗議活動を行ったのです。これは、カタルーニャの人々の独立への思いを利用して権力維持を画策し、さらなる緊縮政策を進めようとしている政権政党CiUへの抗議でした。

El Diarioより)

日本語にすると「笛吹きじいさん」となる、この不思議な名前は「Iaio(おじいさん)」と「Flauta(笛)」からなる造語。その名付け親は、削減政策と民営化からなる新自由主義改革を推進していた元マドリッド州大統領エスペランサ・アギレでした。彼女が15M運動の参加者のことを、侮蔑を込めて「Perroflautaペロフラウタ」と呼んだことに憤慨した人々が、バルセロナで年金生活者からなるグループを結成、自ら『イヤヨフラウタ』を名乗って削減に対する抗議活動を開始したというのが、結成までのいきさつです。

この名前のもととなった「ペロフラウタ」とは、OKUPAオクパ(無断占拠)した空き家で共同生活するような、「反抗的」若者を示す言葉で、彼らが犬Perro(ペロ)を連れ通りで笛Flauta(フラウタ)を吹いて小銭を稼ぐことから、この名がつきました。ファッション的にはパンクス系とヒッピー系があるように思うのですが、だいたいこんな感じでしょうか。

(『君も政治家になろう!』ペロフラウタから政治家になった男の歌で、自分の利益しか考えてないと今の政治家を批判しています)

こうして生まれたイヤヨフラウタのデビューは2011年10月27日「人間のために役立つ経済」を求めて行ったサンタンデール銀行の占拠。この日に読み上げられたマニフェストは、こう始まっています。

私たちは息子や娘のために、より良い暮らしを求めて闘い、それを手に入れた世代だ。現在、私たちの息子たち、そして孫たちの未来が危機に瀕している。その名にふさわしい民主主義と社会正義を要求するため、銀行と共犯者の政治家に対する闘いにおいて、新世代の人々が示している社会の反応や突き上げを私たちは誇りに思っている。私たちは心でも、地域の集会でも、行動でも彼らとともにいる。奴らが彼らを「ペロフロウタ」呼んで、その勇気を傷つけたいなら、私たちのことを「イヤヨフラウタ」と呼べばいい。

それ以来、金融システムに抗議して株式市場を占拠したり、公共料金の値上げに抗議してバスを占拠したりと、今までに21もの抗議活動を行ってきました。この動きはスペイン国内に広がり、マドリッドやバレンシアなど計14のイヤヨフラウタが存在しているとか。デモでも欠かせない存在となり、メディアにも取り上げられています。

「私たちは自分たちを15Mの息子たちだと思っている。15Mはとても重要な意味を持つ自由の爆発で、私たちに再び倫理を注入してくれたんだ」と発起人の一人セレスティン。この番組が収録された日は労働法改正に抗議して経営者団体の本部を訪れるところで、参加者の一人は「自分たちは大変な思いをして労働者の権利を獲得してきて、現在年金生活ができている。少なくとも自分たちが手にしてきたのと同じ権利を、孫たちに残したい」と語っています。

El Diarioより)

フェイスブックで若いグループと交流し、ツイッターで抗議活動への参加を呼びかける、平均年齢70歳の大きな大きな15Mの子供たち。「99%のための世界」が実現するまで彼らの闘いは続きます! Visca els Iaioflautas!!

オバマII-イグナシオ・ラモネ

この記事は10月1日発売号に掲載された記事ですが、ラモネ氏の指示で日本語訳の発表を遅らせました。

オバマII-イグナシオ・ラモネ

この数週間の内に極めて重要な3つの選挙が行われ、その結果によって世界の新しい顔が描かれることになる。一つ目はベネズエラで10月7日に行われる。もし-世論調査が予告しているとおりに-ウーゴ・チャベスが勝てば、ラテンアメリカの進歩主義全体にとって大きな勝利となり、変革継続の保証となるであろう。

二つ目は今月半ばに中国共産党第18回党大会の枠組みの中で行われるもので、ほぼ確実に胡錦濤に替わって習近平が新総書記に選出されるであろう。これは、数ヶ月以内に行われる可能性がある中国の次期大統領の選出、従って世界第二の経済大国及び最も重要な新興大国の指導者、ワシントンの戦略上のライバルの選出への第一歩となる。

三つ目は11月6日、米国の大統領の座に民主党バラク・オバマが残るのか、それとも共和党ミット・ロムニーが取って代わるのかを決めるものだ。政権交代が金融権力(最後に決断を下すのは彼らだ)に大きな影響を与えることはないし、米国の力についての基本的な戦略的選択肢が変化することもないことは明らかであるものの、この選挙が現在の国際情勢を決めるものとなることに疑いはない。

アプリオリにバラク・オバマが出馬したときには、二期目への期待は少なかった。しかし、リビアでの米国外交官殺害や9月11日-2001年のワールドトレードセンターのテロ事件からちょうど11年目だった-の在エジプト米国大使館に対する攻撃によって、突然外交というテーマが選挙キャンペーンの中に飛び込んできた。これがオバマの再選に有利に働くのだろうか?

外交政策についての計画(あるいはその収支)に基づいて勝利した候補者は一人もいない。しかしながら、最近立て続けに起こった悲劇は、この機会にうわべだけの無責任な政治家というイメージを与えたライバルの共和党ミット・ロムニーほどには、オバマに不利には働かなかったと言えるだろう。いずれにしても、ロムニーのイメージは世論が抱く真の国家の男というイメージから大きくかけ離れたものだった。

もし、それにその数日後に流布したロムニーが国の半分-オバマに投票した有権者-は犠牲者、敗北者、支援を必要とする人で構成されていると軽蔑を込めて明言している「極秘」ビデオの破壊的な影響を加えるならば、現職大統領が開票まで数週間のところで、勝利の可能性を取り戻したと言えるであろう。

(彼の勝利は)明白ではなかった。なぜならオバマは2008年のキャンペーン中に約束をたくさんしたことで、提案の数だけ人々を失望させたからだ。彼自身あまりにも多くの夢を売りすぎたことを認めている。彼の人気は急降下した。2009年1月ワシントンでの就任式に2百万人を引き寄せ、ツイッターで1300万人以上のフォロワーを持つ男が、これほど突然にその魔力を失うことになったのは何故か?と問いかけることができよう。

知的に傑出した初の黒人米国大統領は、自らの国の変革を成し遂げることができなかった。お金が政治家を支配し続け、体制は取るに足りない論争に明け暮れる議会のために麻痺したまま、経済はかろうじて動き続けているが、ワシントンが手にする世界の覇権は今までにないほど疑問視されている。

また、ホワイトハウスに着くなり新大統領が大恐慌としか比較できないほど深刻な金融、産業、社会の危機に直面したのも確かだ。 国はすでに800万人分の雇用を失っていた…。にもかかわらず、オバマは船が沈んでいくことに気がついていない印象を与えた。選挙キャンペーンの偉大なぺてん師役を続けた。 難破が近づいているのが見えなかった。任期の第一部で期待に背いた。

彼は―すぐさま−その大きな人気を支えに、金融と銀行の無分別の行き過ぎを攻撃しなければならなかったのだ。再び政治を経済に優先させることを。しかし、これをしなかった。こうして、彼の大統領任期は誤った基礎の上で始動した。

オバマはまた国民の支持を用いてすぐさま共和党を叩き、改革の前線を拡大するべきであった。議会に圧力をかけるために直接国民に向かって話すべきであった。そして、福祉国家の再建と社会の幸福の回復を可能にする社会法や税法に投票することを議会に強要することを。しかし、これもしなかった。慎重に振る舞うことを選んだのだ。そしてこれがもう一つの過ちだった。

彼の医療やウォール街の規制に関する改革が重要であったことに疑問の余地はない。しかし、達成した改革はずいぶんと大人しいものになっていた。医療改革に関する法律は非常に保守的な方法で作成された結果、何百万という米国人が民間の医療保険に頼らざる得なくなった。金融市場の規制に関する法律も投機と銀行セクターの最もひどい習性に終止符を打つところまでは届かなかった。結局、ホワイトハウスは労働者にもっと多くの組合を作る可能性を保障する『被雇用者による自由選択法案(Employee Free Choice Act)』を十分に推進しなかった。

その上、オバマは特に議会において米国の政治家の機能を変えると約束していた。1930年代にフランクリン・D・ルーズベルトが行ったのと同じにように、オバマは国民を動かして、自らの立法闘争の武器として使うべきであった。これもしなかった。そして、最後には彼があれほど批判していた政治家のミイラに似てきてしまった。それは人々が毛嫌いするものだ。結果は、国民に向かって直接話をしたのは共和党であった…。

原則として、民主党には政権運営に必要なものが全て揃っていた。行政権と立法権を支配していた。つまり、大統領府、下院と上院の過半数。通常一国を率いるためには、その二つの重要なハンドルのコントロールがあれば十分だ。しかし、私たちのポスト民主主義社会では違う。

現実には、彼は民主主義的な正当性を手にしていたにもかかわらず、オバマと民主党にはたった一枚のカードしかなかったのだ。今日では政権運営に少なくとも3枚のカードが必要なのである。つまり、彼らにはあと2枚欠けていた。巨大な大衆マスメディア(共和党にはFoxがある)と通りから沸き上がる強力な民衆運動(共和党にはティパーティがある)だ。オバマと民主党はそのどちらも持っていなかった。そして、彼らが無力であることが確かとなった…。

こうして―めったにないことであるが―彼らは、経済と社会の危機の真っ直中で、右派に乗り越えられてしまった…。米国の右派は通りのデモ、政府との闘い、果ては思想の闘いまでも独占していた…。結果は、2010年11月の任期半ばの選挙で、民主党は下院の過半数を失った。

オバマがついにワシントンの政治屋の沼地から出て、民衆運動の方に向けた戦略にすがりつくべきだと理解するには、選挙キャンペーンの始まりを待たなければならなかった。2011年10月デンバーにおいて―ホワイトハウスに到達してから初めて―オバマはSOSの呼びかけを発しながら自らの支持基盤を直接に動かした。「私は君たちの行動が必要だ。君たちが活動的であることが必要なんだ。君たちが国会に行って『自分の仕事をしろ!』と叫ぶことが必要なんだ」。

この新戦略は効果的だった。共和党は突如として防御に回らなければならなくなった。より攻撃的で世論調査で完全にリードする新しいオバマは浮上を開始した。そして、新たな大胆不敵さを身に付けさえした。同性の婚姻への支持や不法労働者への差別的追放を終わらせる方向へ向かう別の移民政策を表明したのだ。彼の人気は上昇した。

その間に、共和党はホワイトハウスへのレースの代表として億万長者ミット・ロムニーを選出した。この人物はすぐさまオバマに対する批判に集中し、 大統領の任期の破滅的な収支を非難した。2300万人の失業者とプレカリアート。米国で前代未聞の予算赤字。4年間で50パーセント上昇し、米国のGDPに相当する国の負債。

ロムニーは有権者の54パーセントがオバマは二期目に価しないと答え、52パーセントが「4年前より現在の生活が苦しい」とみなしているという世論調査を信じていた。

共和党の候補者は、キャンペーンを通じてそれを繰り返すことを止めなかった。こうした世論調査はまた、ロムニー自身が誠実さや国民に対する関心といった点で有権者を説得しきれていないことも示していることを忘れて。調査はまた米国人の大多数が、医療改革から財務政策まで、ほとんど全ての大きな問題についてはオバマに同意していたことも明らかにした。いずれにしても、バラク・オバマの方がミット・ロムニーより彼らを護ってくれると考えていたのだ。

それから、この人物は 非常に保守派のポール・ライアン―下院予算委員長−副大統領候補として指名することを考えた。これがオバマを刺激した。というのも、それを境にオバマは大統領選挙キャンペーンでお馴染みの役割を逆にすることを決意したのだ。自分の収支結果を擁護する代わりに攻撃的な対抗者になることを企てた。すでに、経済を活性化するのが困難なことを正当化するのは彼ではなかった。共和党は彼らの人気のない国家予算の削減計画、「億万長者の税金の引き下げ」や慎ましい生活を送る家族に対する援助の中止という約束について説明することを余儀なくさせた。そうして、オバマは米国民、従って有権者の主要な部分である中産階級のチャンピオンと化したのだ。

9月6日民主党大会での演説において重要な出来事は、大統領は外交政策を除き、今期の収支を弁護しなかったことだ。彼が回顧したのは、オサマ・ビン・ラディンの死、イラクからの撤退、アフガニスタンから軍隊を撤退させるという決定だった。

世界を大きく失望させた彼の外交政策の収支に関して言うべきことはたくさんあった。ラテンアメリカ(キューバ、ベネズエラ、ホンジュラスとパラグアイの国家クーデターなど)だけでなく、近東(アラブの春、リビア、シリア、イラン、パレスチナ…)においても。しかし、すでに述べたが、選挙結果を決めるのは外交政策ではないのだ。

すべては経済と社会問題に関して競われることになる。そして、ここ数ヶ月でこれらは目に見えて改善したのだ。例えば、成長率はプラスに戻った(3ヶ月の平均がプラス0.4パーセント)。雇用状況も大きく改善した(この6ヶ月で100万の雇用が創出された)。国家のお陰で破産を逃れたゼネラルモーター社は世界の主要な自動車メーカーのリストで(トヨタに代わりに)トップの座を取り戻した。住宅建設もまた改善している。株式市場は2009年から50パーセント以上発展した。家庭の消費は再び上昇に転じている.

果たして最近の改善はバラク・オバマの再選を保障するのに十分であろうか?

(訳・海老原弘子)

Obama II : Ignacio Ramonet

(ル・モンド・ディプロマティク・スペイン語版2012年10月号より)